中学生のマツキ君は、夏休みに、少年会のキャンプに参加した。
場所は小学校の隣にある河原で、近くには寺もあった。

少年会と言っても年に一度、思い出したように行事が行われるだけだ。
子供達が自発的に参加しているのではなく、大人達が勝手に運営していた。

そんな会だったから、その年にキャンプをする仲間で、マツキ君は知らない子が二人いた。
少年会には、三つの中学校から子供が集まっていた。

マツキ君は、とてもはしゃぐような気分にはなれなかった。
ここには、両親を喜ばせるために来ただけなのだ。
他の子も同じ気持ちらしく、食事もキャンプファイヤーも白けた雰囲気だった。

マツキ君達は河原の隅に、二つのテントを張ることになった。
三人、三人で別れる。
マツキ君のテントに、初対面の子が一人いた。
トランプなどして仲良くなろうとしたが、それも途中で面倒臭くなってやめた。

子供達は早々と寝る支度をし、カンテラの炎を消した。
当分眠れそうにないが、気まずい雰囲気に耐え続けるよりはましだった。

マツキ君が何度も寝返りを打ち、目を閉じて眠ろうと努めていると、初対面の少年が寝袋から這い出てきた。
幕を持ち上げて外に出ていく。
小便でもしに行ったのだろうと、マツキ君は気にしなかった。

しかし、一時間経っても、二時間経っても彼は帰ってこない。
マツキ君はもう一人の子を起こすと、隣のテントを見に行った。
そこにもその少年は来ていなかった。

大人達に知れたらまた面倒なことになるし、何らかの事故に遭ったのかもしれない。
子供達は、懐中電灯を持って彼を探すことに決めた。

小学校の校庭を見回してみても、誰もいない。
寺の周辺を探したが見つからない。
まさかとは思いつつ、マツキ君達は墓地に向かった。

墓地に着くと、闇の中でTシャツの白い影が動いている。
マツキ君達は思わず身を潜めた。
段々と目が慣れてきて、白い影は間違いなくその少年だと解った。

少年は手が汚れるのも構わず、何かに取り憑かれたように土を掘っていた。
墓石をずらし、その下から骨壺を取り出す。
少年はそれを開けると、中から白骨を抓み出し、それを口に入れようとした。

「お、お前何やってるんだ!!」

恐怖に堪え切れなくなったマツキ君は、懐中電灯で少年を照らした。
光の中に、幽鬼のような顔が浮かび上がった。
恐る恐る、他の仲間達もマツキ君の後ろから這い出してくる。
少年は骨を持ったまま頂垂れて、一言呟いた。

「これ、お母さんの墓なんだ」