これは俺が中3の頃の話。
夏休み真っ盛りの俺は、母に「ばあちゃんの古希の祝いがあるから手伝え」と言われ、ばあちゃん家に連れて行かれた。
しかし予想以上にやることが多く、途中から面倒になりTVを見ながらゴロゴロしていた。

昼過ぎになるとばあちゃんと母は材料の買い出しに行き、俺はその間に2階の部屋を掃除しろと仕事を仰せ使った。
そしてばあちゃんからはなぜか「2階の窓は全部閉めてあるけど、絶対に開けちゃダメだよ。絶対だからね!」と強く釘を刺された。

そのことを不審に思いながらも2階に上がると、ばあちゃんが言っていた通り全ての部屋の窓は閉められており、所々埃が大量に溜まっていた。
何枚かの窓にはガムテープまで貼られており、かなり気味が悪かった。
しかも全部鍵閉められてないし・・・。

真夏なので、かなりの熱気がこもっていたし、こんな異様なところで何時間も掃除をするのかと思うと、やる前から気が滅入る。

ばあちゃんから言われたことを律儀に守り黙々と掃除をしていたのだが、やはり暑い。

それでも着々と進めていると、つけてあったTVの声以外に、一階から微かに物音が聞こえた。
ガチャガチャとドアを開けるような音が。

来客かと思い降りてみると、なぜか誰もいない。
それなのにドアは微妙に空いてる。

「ん?ドア閉めてたよな?あれ?閉めてたっけ?」と脳内を漁ってみたが、面倒になりやめた。
たぶん閉めてなかったんだろと自分を納得させ再び掃除に戻るが、なぜか2階はさっきよりも空気が淀んでいた。

さすがにこの空気の中続けるのはマズイと思い、止められていたが窓を開けてみることにした。
たぶん怒るだろうな、けどばあちゃんなら笑って許してくれるはずだと踏み、意を決して窓を開け、残りの窓も開けていった。
窓を開けると淀んでいた空気が一気に逃げていった
最後の窓を開けた次の瞬間、タイミングを合わせたかのようにまた一階から音が聞こえてきた。

今度はさっきみたいなドアを開けた音ではなかった。
ギシギシと床の上を歩くような音だった。
タイミング良すぎて気味が悪かったのでビビった俺は、護身用にと側に置いてあった竹箒を手に取り、ソロソロと階段を降りた。

そーっと覗きこむと、先程のように誰もいない。
確かに人の気配はした。それなのに誰もいない?

正直ゾッとした。

俺は、とにかく2階で母たちが帰ってくるまで待とう、ここに居てはいけないと悟り、階段を駆け上がった。
だが、2階の窓はすべて開けたのに、自分の正面にある一箇所だけを残して、すべての窓が閉まっていた。

心臓がキュッと縮まるのがわかった。
軽くパニクった俺は、とにかく正面の窓からベランダに出てそこから逃げようという謎思考に陥り、その窓に近づいた。

だけど、近づけなかった。

誰かがその窓から俺を見ていたから。
そして、そいつと目が合った。
その顔には精気がなく、真っ白で、完全に無表情だった。

怖くて身体が動かなかった。
しかも目ぇ合っちゃってるし。

するとそいつはいきなりバァン!!と音を立てて窓を閉め、フッと消えた。

そこで意識が途切れた。

気がつくと自分の家のベッドに寝ていた。
母には2階で倒れていて、軽い熱中症にかかったと説明された。
あのとき見たことは母には言わないでおこうと思い、数日後母には秘密でばあちゃんに一部始終を説明した。
だがばあちゃんは「・・・忘れなさい」の一言だけ。
俺もあまり思い出したくなかったので深くは追求しなかった。
その後ばあちゃんが引っ越すまで2階には上がらなかった。

しかしいまだに開けっ放しの窓を見るとそいつのことを思い出してしまう。