普段霊感ゼロの俺が冴えてた日の話。

遠方に住んでる5年来の友達Yが、1週間ほど俺のアパートに泊まりに来てた。
毎晩騒いで楽しい1週間だったんだけど、ついに彼が帰る日になってしまった。

Yとは1年に1度会えるかどうかなので、「また寂しくなるな」なんて思いながら、彼が帰る準備をする様子を見ていた。

するとYは突然、「やべぇ、カバンが壊れた!」と言い出した。
Yの鞄はファスナーで開け閉めするタイプだったんだけど、見ると、噛み合わせが悪いわけでもないのに開かなくなってしまっていた。
Yが力ずくでファスナーを引っ張ってみても、ビクともしない。

その間にもYが乗るバスの時間が迫ってきていたが、俺は「これでバスに乗り遅れれば、Yの滞在期間が延びるかも!」と、ちょっと期待してしまった。

開く気配の見せない鞄に業を煮やしたYは、「ちょ、お前やってみてくれ」と俺に鞄を渡した。
なるほど、どんなに思いっきり引っ張っても、ファスナーは動かない。

それを見ていたYは、「どうしよ・・・」と困り果てていた。
どうやら次の日は大事な授業があって、どうしても今日中に帰らないといけないらしい。
で、今日中に彼が帰るには、そのバスに乗らなければいけない。

Yに帰ってほしくないと思っていた俺だが、その事情を知ってYが可哀想に思えてきた。
そして心の中で、「どうか開いてくれ!」と強く念じて、優しくファスナーを引っ張った。

すると、さっきまで開く気配すら見せなかった鞄が簡単に開いてしまった。

「え!?どうやって開けたの!?」と驚くYに、俺は冗談で「霊力使ったんだよw」と言った。

Yは「あっそwwでも、どうして開かなくなったんだろ?」と言って、まだ荷物を入れてないのに、もう一度鞄を閉めた。
その時俺は、鞄が開いたことにほっとしていたが、また少し寂しさが込み上げてきた。

そしてYが再び開けようとすると、またもや鞄は開かなくなってしまった。

焦るY。

彼は「もう1回開けてくれ!」と言って、鞄を俺に渡した。

俺はもう一度「開いてくれ!」と念じ、ファスナーを引っ張った。
すると、さっき同様簡単に開いてしまった。

「なんで!?ホントに霊力!?」と不思議がるYに「荷物入れるまで閉めんなよ」と言って鞄を返した。

Yはなんとかバスに間に合い、帰っていった。

Yが帰った夜、俺は大学の友人Mと遊ぶ約束をしていた。
集合時間は20時。

時間通りに集合場所に着いたが、Mの姿はない。
20時を少し過ぎたころ、メールが1通届いた。
見てみるとMからで、「ちょっと遅れる」とのこと。

まぁMの遅刻グセは毎回のことだったし、「またか」と思いながら待つことにした。

しかし30分経っても彼は現れない。
さすがにイライラしてきたころ、再びMからメールが来た。

「今K(友達)の家の前で話してるんだけど、来る?」と。

普段温厚な俺もさすがにキレた。
集合時間過ぎてから「ちょっと遅れる」とか言って、さらにそれが別の友達と喋っているからっていう理由で、さらにさらに、その後30分以上も連絡なしで、挙句の果てには、待たせてる俺を自分がいるところに来させるなんて、フザけるのもいい加減にしろ!!

そして俺は、何もない空間に向かって思いっきり蹴りを入れ、もうメール無視して帰ろうとした。
しかし、Mに言ってやらないと気が済まないと思い、俺はKのアパートへと向かった。

MとKは、Kのアパートの前の道で話していた。
俺が近寄っていくと、Mは慌てたように「ちょっと聞いてくれよ!」と言ってきた。

「謝りの言葉もねーのかよ」と思いながらも事情を聞くと、「俺のチャリが壊れた!」と。
そのときはただ「ざまぁwww」としか思わなかったんだけど、詳しくそのときの状況を聞いて驚いた。

MとKが喋っていると、どうやら側に停めておいたチャリの前輪ブレーキのワイヤーが、何の前触れもなく切れたらしい。
チャリを何かにぶつけたわけでもなく、倒してしまったわけでもなく、ましてや触れてさえいないのに突然「バチン!」と音がして、ワイヤーが切れてしまった、と。

壊れた時間をMに聞くと、「お前に最後にメール送った直後だった」と。
ってことは、俺がキレた瞬間ってことか・・・。

偶然かもしれないが、人の強い「思い」や「念」っていうのは、ものすごい力を持っているのかも・・・と思わせてくれた2つのエピソードですた。