川島が荻田に聞いた。
普通なら、撮り直すのが当然かも知れなかったが、すでに三学期後半。
付属高校ということもあり、生徒はほとんど登校して来ない。
次の登校日まで待っていたら、アルバムの制作の方が間に合わなくなる可能性がある。

とはいえ、こんなにはっきり写っている写真をアルバムに載せたら、生徒達も何を言うか分からない。
この時代、今のようなデジタル処理などほとんど無く、不自然さが無い修正は厳しかった。

悩んでいる所に、過去何度かアルバム制作に携わった八代先生が助言を出した。

「当日休んだ生徒がいるでしょ。その生徒の囲みを、そこに入れたらどうですか?」

結局この意見が採用された。

「しかし、この顔、2年前に自殺した、加藤君に似てるね」

八代は、写真を見ながら、ぼそっとつぶやいた。

加藤君とは、2年前の夏休みに田舎で首を吊って自殺した生徒であった。
原因は不明。
一説には、いじめがあったと言われているが、はっきりした裏は取れていない。
その時の担任も、荻田であった。

「え、嫌ですよ先生、そんな、違いますよきっと」

荻田はそう言って、ハンカチで汗をぬぐった。

こうして心霊写真は隠蔽され、無事アルバムは完成した。

それから5年後。
C組の同窓会が開かれた。
しかし43人全員出席とはならなかった。
卒業して一年目に、二人の生徒が事故に遭って死亡していたのである。

その二人は、アルバムで、囲みとして写真を隠す役を務めた二人だった。

「これ、まずいよ」

そう言ったのは、卒業アルバム担当の川島先生だった。
彼が机に置いた写真、それは3年C組の、アルバム用の集合写真。
他の先生が集まってくる。

「やだ!何これ」

C組担当の荻田先生が、驚いて口元に手をやる。

写真は、校庭で撮ったもの。
真ん中に先生、それを取り囲むように生徒達。
一見変わった様子は無いが、その背景、右上に、はっきりと男の顔が浮かんでいた。
筋金入りの心霊写真である。

「どうしますか?先生」