オカル懐疑派の友人から聞いたお話。
彼が娘とその友達を連れて海水浴に行った時の話しだそうだ。

その時、ビーチボールと共にプラスチックハンガーで作ったダウジングロッドを持参したと言う。
深い意味は無かった、水遊びに飽きた娘達にL字型のプラスチックハンガーを両手に持たせ砂浜で宝探しをさせたら時間が潰せると思ったからだ。

思った通り、少女達はしばらく泳いだ後、ダウジングロッドを持って砂浜を歩き始めたらしい。
彼は安心し、連れてきた少女達よりも少し大人の女性達の水着姿をサングラス越しに眺めていると・・・いつの間にか少女達は必死になって砂浜に大きな穴を掘っているとこであった。

彼は重い腰を上げ砂浜の大きな穴に近づくと「何か見つかったかい?」と声をかけた。
少女達はキャッキャ言いながら彼に説明してくれた。

三人がダウジングロッドを持って砂浜をうろついていると、なぜか三人が三人ともこの場所でダウジングロッドが開いたそうだ。
だからココに宝物でも埋まっているに違いないのだと言うのだ。

お手洗いさえも一緒に行きたい年頃の少女達が持つ『親和の欲求』だなと彼は思ったそうだ。

すると、掘っている穴の前にあった海の家の親父が不機嫌そうに少女達を見ているのに彼は気付いた。
少女達の作業は海の家の正面とは言え少し離れているし、何より穴と言っても大人がやっと埋められる程度に過ぎなかった。

ところが、海の家の親父は肩を怒らせてやってくると、商売の邪魔だから他所で遊べ言う。
彼は素直に親父に謝罪すると少女達を連れその場を離れた。

少女達は不満であった。
あそこに宝物があることを知っているからこそ、あの親父は少女達の邪魔をしたのだという。
彼は少女達をなだめ、新しい方法を伝授した。

「目隠しをしてダウジングをする」

少女達はそれに食いついた。
一人が目隠しをしてダウジングロッドを持ち、他の二人は危なくないように見守ることにした。

しかし、不思議なことに目隠しをしても三人の少女が三人とも、さっきのあの場所でダウジングロッドが開いたのだ。

彼は説明してくれた。
ダウジングの効果に科学的根拠は無い。

その時、彼はベトナム戦争に将校として従軍した人物の話を紹介してくれた。
その人物は戦場で古参の兵士にダウジングロッドを使って対人地雷や落とし穴を見つけさせたと言う。
だが、それは非科学的な力に頼ったものでは無く、経験豊かな兵士が敵が仕掛けたブービートラップを
探し出す要領と緊張感がダウジングロッドを無意識に動かしている、と言う。

人間の無意識の筋肉の活動「不覚筋動」を利用する。
ダウジングはコックリさんと同様に目隠しをさせるとデタラメな動きをしてしまう。

私は彼に聞いてみた。
なぜ三人の少女は目隠しをしても同じ場所を見つけることが出来たのか?

「偶然・・・もしくは、誘導する友達の声に反応した・・・だがね、実はあの砂浜は昔、女性が自殺したのだよ」

「君のお嬢さん達が自殺した場所に引き付けられたと言うことは?」

「どうかな?この国は毎年三万人以上の人が自殺している。この数字は交通事故死よりも多い。話をさかのぼれば大抵の交差点では死亡事故が起こっているように、自殺者が出た場所など珍しくはない。それに何より・・・娘達が穴を掘っていた場所は自殺者が発見された場所ではない」

「どうして違うと?」

「僕も昔は野次馬だったからね、自殺者が出た時に見に行ったんだよ。発見された場所は娘達の穴よりも十メートル以上向こう。発見された場所の正面にあった海の家はその後で潰れてしまった・・・。それ以来、海の家の店主は何度か替わったが上手くいかず。いつの間にか、そこには海の家は開かれなくなったんだ」

私はフト思ったことを口にした。

「もしかして、自殺者は君のお嬢さん達が見つけた場所で死んだのではないかね?場所がずれているのは、そう君のお嬢さん達に文句を言った海の家の親父、本当は親父が最初に死体を見つけた。そして商売の邪魔になると考えた親父は死体を動かした」

彼は少し考えると「あの親父ならやりかねないな・・・。筋の通る話ではあるが、その話を認めるには
娘達のダウジングの効果を認めるのが前提になる」と言った。