小学生の頃の話と、20歳の時、22の時のこと。

小学生の頃、伊丹十三監督のスイートホームがTVでやってたんだ。
あの頃は13日の金曜日とか、バタリアンとか普通にゴールデンで放送してた。
そんな古き良き時代。(どうでもいいですね)
俺はスイートホームをビデオで録画しつつTV見てた。
見てたって言ってももともと怖がりで、ほとんど手で顔隠したり、怖いシーンの手前で後ろ向いたりして、雰囲気だけを楽しんでた。

翌日小学校に行くと、前日のスイートホームの話で持ちきり。
でも、ちゃんと見てなかったり、見逃したって話が出てきて俺登場。
小学生特有のノリで「ビデオ撮ったぜ!」と、そんな流れで放課後にそのまま俺の家で数人が集まってスイートホームの鑑賞会に。

4人くらいでワイワイ集まっていざビデオを回してみると・・・スイートホームが始まらない。
巻き戻しても、早送っても入ってない。
テープを出して確認しても間違ってない。
確かに録画したのに!

小学生の俺は目の前真っ暗、友達を集めた手前後にも引けない。
そんな中、母が会社に行ってる父に電話をしてくれていた。(自分が社会人になった今となって考えると、迷惑な話だな)
どうやら俺が寝た後に、何も知らない父が入ってたテープにそのま別の番組を重ね撮りしたらしい。

スイートホームを録画したのは嘘じゃないって証明が出来た気がしてちょっとほっとしたけど、これからどうする?って話になった。
そのまま普通に遊ぶのもそんなに面白くない。
もともと、ホラー映画を見る為に集まったんだから、何か怖いことをしたい。
そんなこんなで、俺の家のアルバムから心霊写真を探すことになったんだ。

母に頼んで俺のアルバムを持ってきて貰って皆で探し始めた。
大きいアルバム3冊分くらいあったのか。
木の陰が怪しいだの、TVの反射が顔に見えるだの、それはそれで楽しかった。
1枚の写真が出てくるまでは・・・。

見つけたのは俺じゃなかった。
今となっては集まってたのが誰かも覚えてないけど、友達の1人が悲鳴を上げて1枚の写真を放り投げたんだ。

何だ何だと、放り投げられた写真を囲んで確認した。
ちょうど心霊写真のTVで写真が出てきた直後の感じ。
誰もすぐに分からなくて、みんなで必死に1枚の写真にかぶりついた。

「あっ!」

誰かが写ってるものに気がついて指差した。
一同騒然。

写真の中央に3歳の頃の俺、何があったのか立ったまま号泣してる。
場所は、その当時住んでた社宅のアパート。

俺の右側(向かって左)に寝そべっている父の胸から下。
俺の左側(向かって右)には14インチくらいのTV、その下に同じ横幅のレコードラック、奥にはベランダに出る大きなガラス窓。
おかしな物が写っていたのはすごく有りがちなんだけども、TVの下のレコードラック。

ラックのガラス戸に絶叫するように口を大きく開け苦悶の表情を浮かべる青い顔が写ってた。

写真を撮ったのは母、弟は居るがまだ産まれてない。
父は寝そべっていて角度的に顔は映りこまない。
家族全員その部屋に居たことになる。
本当に心霊写真が見つかってからは、もー大騒ぎ。

スイートホームは見られなかったけど、俺は写真1枚でちょっとヒーローだった。
翌日学校に持っていこうって盛り上がってた時に、母が写真をひょっと奪ってそのままコンロで燃やしてしまった。
俺、大ブーイング。

今でもその写真は目に焼きついてるけど、TV局に送ったら放送確実な感じ。
本当にもったいないことをしてくれたもんだと思ってる。

時間は流れて20歳のある日。
俺は取り憑かれたように、心霊スポットに通っては夜通し写真を撮ってくる日々を送ってた。
意気揚々と写真を撮りに行くんだけど、数時間もしたら腰やら足やら痛過ぎてまともに歩ける状態じゃなくなるんだわ。

体は毎日のようにガタガタになってく。
ここでも色々あるんだけど、それはまた別で話す。

その当時の俺は、昼間学校、夜中は心霊スポット、明け方帰宅して身支度。
そんな生活を繰り返してた。

それなりに回数を重ねるようになってから、肩こりが慢性化して悪化。
首回して横を見ることも出来なくなるくらいになってた。
周りの連中は俺のしてることを知ってたから、「絶対霊障だ。もー行くな」と、俺のことを心配してくれてた。

それなりに霊感のある友人が肩を揉んでくれて、昨晩の話をする。
そんなある日、いつものように俺の肩に手を乗せた友人がいきなり悲鳴を上げた。

「どしたん?なんか憑いてきてた?w」

「今回はお払い行った方が良いかもしれんぞ」

「なにさ?w」

「お前の肩に手を乗せた時に、頭に顔がフラッシュバックしてきた、こんなん」と、その頭に浮かんだという表情を真似る友人。
大きく口を開け、頭を若干傾けた友人の顔は小学生の頃に見つけた心霊写真と同じ顔だった。

「・・・冗談よめれよw」

「すっごい笑ってるか、すっごい苦しんでる、青いおっさんの顔だった」

「・・・」

「お前大丈夫か?」

俺は小学生の頃の話を友人に話した。
内心穏やかじゃない。
友人の顔はあの思い出の写真とまったく同じ顔になってた。
あの日の記憶が一気に蘇る。

誰だかは分からないが昨日今日って話じゃないなら大丈夫かというような話になって(根拠なし)その日は終了。
俺の心霊スポット巡りはまだ続くけど、それは別の話。

時間は流れて22歳のある日。
20歳で実家を出ていた俺は、何の為だったか忘れたが実家に行ったんだ。

実家のリビングで何の気なしに母と話していた時に、夏恒例の番組「あなたの知らない世界」が放送されてた。

ついつい2人で見入ったあと、別の番組で心霊写真特集。
見事なコンボに、ふと小学生の頃の写真の話を思い出した。

「あの写真さ、TVに送ったら絶対賞金貰える写真だったよね」

「あれ、あんたのひいじいちゃんよ」

「ん?」

「あんたが生まれるちょっと前に脳卒中で亡くなってるんだけど」

「・・・ふーん」

「あんたが泣いてるから心配して見に来てたんじゃないの?」

「そんなもんかね」

ひいじいちゃんは、3歳の俺も心霊スポットに馬鹿みたいに通う俺も同じように見守ってくれていたようだ。

これが小学生の頃に見つけた心霊写真から始まる、青い顔の話。
何年も墓参りしてないから、今年は行かなきゃな。

急にこんな何年も前の話を思い出したんだ、きっと呼ばれてるんだと思う。