7~8年くらい前の私の体験です。

夏に、親父と私(小学生)が2人で、車に乗って出かけたことがありました。
目的はよく覚えていないのですが、確か祖母の家に行く、とか、そのような感じだったと思います。

夜の10時くらいでした。
親父が、タバコを買うのでちょっと待っていてくれ、と言い、住宅街の暗い夜道の脇に車を止めました。
車には私一人です。
私は車の窓を何気なく開けました。
車を止めた場所からすぐ近くにあった、学校らしき建物。

そのグラウンドの上に誰かいるのが、薄暗い灯りによって見えました。

4~5人くらいだったでしょうか。
みな、手にホウキのような物を持っていて、何かが入った袋のようなものを取り囲んでいました。
かなり大きいそれは、もぞもぞと動いていました・・・。
親父は、まだ帰ってきませんでした。

あれは確実に「人間」で、しかも「大人」では無かったと思います。
私は視力がかなり良いほうなので、背丈や顔の特徴から、当時の私と同じくらいの子供だったと確信しています。
長めのスカートも見えたので、少女もいたのでしょう。

彼らが、ホウキのような物で、その袋を殴り始めたのは、それからすぐのことでした。

袋の中からは、うめき声らしき物が聞こえました。
鈍感ながらここで初めて、恐怖が襲ってきましたが、今、窓を閉めると、閉める時の音でバレてしまうと思い、それも出来ずに、私はその光景をずっと見ているだけでした。

子供たちは、袋に入った塊を殴り続けています。
だしぬけに、それを足で踏みつけたのは、スカートを穿いたあの影でした。

うめき声は、もうかなり小さくなっていました。

どれだけ長かったでしょうか・・・タバコを手にした親父がようやく帰ってきました。
そして、親父がドアを開ける音に安心しました・・・が、その途端、殴打の音が突然止んだのです。
反射的に、ハッと振り返りました。

グラウンドに並列に並んだ小さな影は・・・微動だにせず、私の方向を向いていました。

全員の手にはホウキ。
動かなくなった袋。

安心は一気に吹き飛びました。
私は座席の下に潜り込むように隠れ、車が発進するのを、ただひたすら待ちました。
親父は怪訝な顔をしていましたが、そういうことに対して割と無関心な人で、深くは追求されませんでした。
私も、説明する気になどなりませんでした。

帰り少しが遅くなったのは、ただ、札の通る自販機が遠くにしか無かったから、と聞かされました。

あの後、私が知る限りでは、そのような感じの事件は無かったように記憶していますが、それは私が知らないだけで、もしかしたら・・・とも考えたりします。

これが霊感などは全く無い私の、ただ一度だけの、不可解な恐怖体験です。