昨年の今頃の話。

とある試作品をどうしてもその晩の内に研究所へ持ち込まねばならず、営業車で高速に乗った。
中央道から富士五湖有料に入り、霧の坂道を安全運転で走っていたらライトの調子がおかしくなり、とうとう消えてしまった。

ハザードつけながら路側帯に停車、ヒューズが飛んだかと思って色々いじってたけど直らず。
電灯もないし、無灯火で走り事故でもして連日徹夜の試作品が壊れたら大騒ぎじゃ済まないので運転席で途方に暮れていた所、酷い耳鳴りがして気持ち悪くなった。

ふとミラーを見ると、営業車の背後に人影が・・・。
気付いた瞬間、耳を襲う「ギャーッギャーッ」といった鳥か獣の鳴き声・・・。

深夜2時を回ってこんな所に誰かいるわけが無い。
見渡す限り深い森だし近くに停車している車もない。

『ひた、ひた』、というか『ぺた、ぺた』、と裸足で歩くような音がやけに耳に入り、近寄っているのが感じられる。
実際に裸足で歩いていたとしてもエンジンかけてるからそんな音聞こえるわけないのに。

「もうダメだ、逃げないと」と思って急発進。

同時に『ベタッ』って後部のガラスに何か張り付いたような音。

見たくないのでミラーを手で曲げて前だけに集中して霧の中を走る。
トンネルの手前くらいでなぜだかライトが復活し、料金所までともかく後ろ見ないように走った。
料金所の照明を見たときは本当に救われた気分になった。

有料道路を降り、しばらく走ったコンビニでコーヒーを買い一息ついたあと、あの音が何だったのか気になって後部ガラスを見てみると、霧で濡れたガラスと車体に物凄い数の手の跡がついていた・・・。

それ以来、遠回りでも東名使うようにしています。
今でも思い出す度に心臓が痛くなるくらいトラウマ。
手の跡も怖いけど、あの鳥だか獣の鳴き声って何なのだろうね。