子供の頃、トイレ行きたくなって目が覚めるの怖くなかった?
オレはすごく怖くて、いつも母親を起こして一緒に行ってもらってた。
ときどき、母親の髪とか寝間着とか変に乱れてる時があって、そんな時は母親が何だか不機嫌だったんだけど、今考えると「大人の事情」だったんだな、たぶん。

それで、ビビリのオレも大人になって、結婚して、子供(長男)が出来た。
可愛い、すげ~可愛い。
抱いてあやすとニコニコ笑うし、もう最高。
こないだまでオムツ換えてた感じなのに、子供ってアッという間に大きくなるのな。
嫁がトイレトレーニング始めてさ、嘘みたいに上手くいって拍子抜け。
そこで気が付いたわけよ「こりゃ、いよいよオレもトイレに起こされる」って。

だけど全然起こされない。
嫁に聞いても起こされたことは無いって言う。
オレと違って寝るとトイレが遠い子供なんだな~って思ってた、その時は。
でも、そうじゃなかったんだ。
わかったのは3歳の誕生日過ぎた頃。

ある日、職場の飲み会で帰るのが遅くなった。
前もって話してあったから嫁と息子は既に寝てる。
家の中真っ暗。
飲み足りなかったんで帰りにコンビニで買った酒とつまみで延長戦。
良い気分でダラダラしてたら、寝室から「ガタッ!」と物音。
びびって廊下を覗いたら、寝室の襖がス~ッと開いた。

嫁に怒られる?(嫁はオレが酔うのはキライ)ってびびったら、出てきたのは息子で電気も点けず廊下を横切ってトイレに入った。
何かブツブツ言う声が聞こえたが、しばらくしたら水を流す音がして普通にトイレから出てきて寝室に戻って襖を閉めた。
オレには気付いてない様子。
その後聞こえるのは寝息だけ。
寝室を覗いたら嫁と息子はすごい寝相で爆睡。

翌日、息子と自転車乗りに行く約束してたんで、2人で公園に出かけた。
ひと休みした時に、ふと昨夜のことを思い出して、息子に聞いてみたんだ。

オレ「◯◯は夜1人でトイレ行けるの?すごいな~、怖くない?」

息子「え~、全然怖くないよ、だって、いつも夜はトイレに龍がいるから」

オレ「は?り、龍?トイレに龍がいるの?」

息子「うん、水貯めるタンクがあるでしょ。いつもあの上にいるよ」

オレ「え~っと、じゃあ、自転車のカレンダ-貼ってあるところ?」

息子「そう、真っ白で小さい龍。最初ヘビなの?って聞いたら『龍』って言った」

オレ「小さいって、どの位の大きさ?この位(両手を幅1mくらいに拡げて)?」

息子「そんな大きくないよ。この位」

息子が拡げた手の幅は20cmくらい。

息子「目が覚めたら、いつもトイレは少し明るくて、中に龍がいるよ」

息子「龍は『また来たか』って言うから◯◯もオーって言ってシッコするの」

息子「シッコしてバイバイって言ったら龍も『バイバイ』って言うよ。そんで寝る」

オレ「その龍は、ムーミンの龍に似てる?羽は生えてる?(DVD参照w)」

息子「ううん、全然似てない。ヒゲが長くてウロコがある。羽はないけど浮いてるよ」

もっと聞きたかったが、その日はそれ以上、龍の話はしてくれなかった。
でも、半月ほどたった休日、一緒に近くの港で釣りをしていたら、今度は息子が自分から龍の話を聞かせてくれた。
昨夜の龍は様子が違ったという。

息子「昨日は、トイレに龍いなかったよ。だからひとりでシッコした」

息子「でもトイレから出たら、廊下の天井に大きくなった龍がいた」

息子「廊下の天井は狭いから、クネクネ曲がって天井にはまってた。ギューッって」

息子「ここにいたの?大きくなったねって言ったら『うん色々あってさ』って」

息子「もうトイレにはいないの?って聞いたら『明日からはまたトイレにいるよ』って」

息子は4歳になった。
今も1人で夜トイレに行く。
時々「今もトイレに龍いる?」って聞いたら「ウン、いるよ」って言うんだけど・・・。

一体息子には何が見えているんだろうね。
オレも小さい白い龍、見たいよ。