自分は、普段はほとんど「見えない」が、夢の中でだけ霊と話しができる。

お盆の時とかは、婆ちゃんとかが遊びに来てくれて、「元気にやってる?」とか話したり、エネルギーをくれたりするので特に不満もなく、普通に過ごしていた。
でも、それが初めて仇になることがあった。

去年の夏、お盆の最中北海道まで俺、友人K、友人Tと3人遊びに行った時のこと。

そこで泊まった旅館は、古いといえば古いけど、歴史があるらしく中も丁寧に掃除しているらしく、好感が持てた。

そこで浴衣に着替えるとき、友人のKがこんな提案をしだした。

「浴衣のオリを逆にすると死装束と間違えられて、霊が連れに来るって言うじゃん?ちょっと面白そうだから、今日一晩逆で過ごしてみないか?」

ちょっとだけ嫌な感じもしたけど、旅行ってことでテンションが上がっていた俺たちはKの提案を二つ返事で引き受けた。

最初は「来るならこいや(^^」とか言ってふざけてた俺達も夕飯を食べたり、トランプなどをしているウチにそのことはすっかり忘れてしまっていた。
特に誰が言い出したわけでもなく、寝ることにした。

すると・・・思い出したくもない「史上最悪の夢」を見た。

その夢の中で、俺はひどく暗く、けど視界はやけにハッキリとする部屋の中にいた。
時代劇に出てくるような20畳くらいの畳の部屋の真ん中で、白い着物を着ていた。

また、いくつかの襖があった。
どうやら「どこか」に続いているようだ。
そして、何時の間にか目の前に同じく白い着物を着た男の子が立っていた。
男の子には目が無かったが、不思議と怖い感じはしなかった。

男の子は、何もいわずに俺の後ろを着いてきた。
それは子供が母親に着いていく、と言うよりまるで「監視」しているようだった。

その子は、何を話しかけても無反応で、一体どうしたものかと思ってたら、その子の目のある部分に少しずつ切れ目が走ってるのがわかった。
なんか嫌な感じがしたのでとりあえず、自分は先に進むことにした。

なぜか頭の中で、どこに進めばいいかが確信でき襖を一つ、また一つ開けていくうちに、どんどん部屋は狭く、明るくなっていきまた襖を開けるたびに、匂いや触感がどんどんリアルに感じてきた。
そして、男の子の目のあたり切れ目はどんどん広がっていった。

ちょうど10回くらい同じことを繰り返しただろうか・・・。
ついに部屋の大きさは4畳半ほどになり、部屋も普通に光を感じる明るさになっていた。
なぜか最後は扉になっていて左右に二つ。
なぜかここに来て、どちらを開ければいいかがわからなくなった。

左は光の強い扉。
右はそうでもない扉。

今までの通りに自分は光の強いほうの、左の扉に手をかけようと思った刹那だった。

「いけない!!!」

それは間違いなく婆ちゃんの声だった。
言葉通り自分はそのまま硬直してしまった。
そしてふと周りを見ると周りはガレキや、黒カビのようないかにも廃墟といった風景になり自分が開けようとしたドアは無く、代わりに全てを飲み込んでしまいそうな闇が広がっていた。

とたんに、その状況が一変して恐ろしく怖くなり、踵を返して反対の方向を向いたら足元に恐ろしい顔をして、猫のような片目でこちらを睨んでいる少年の顔があった。
もうその瞬間に、その状況が耐えられなく怖くなって俺は急いで反対側の闇の方に飛びこんだ。(そういえばどっちも闇だった)

その瞬間に、本当はもっと時間が過ぎていたのかもしれないけど、上体だけ起こしている状態で目が覚めた。

時計は2時を示していた。
汗がだくだく出ていた。

自分はそのまま友達の迷惑も考えずに、電気をつけて冷蔵庫から水を出して飲んだ。
喉がカラカラだった。
すぐに友人二人が目を覚ました。

俺は本能のまま、寝ぼけ眼の友人に事の経緯を話した。
どちらも夢は見なかったようだが、話は信じてくれた。

少し落ち着いてきて、ふと水を飲もうと上を見たら天井の隅に、あの少年の顔があり、「友人二人」を完全に開ききった白い目で両目違う方向を見て睨んでいた。
俺には興味が無いようだったが、俺を絶叫させるには十分フラグが立っていた。

うまく纏められなかった上、オチも無いけど全部本当にあった話です。
その後の友人達には、特に何も起きなかったので良かったです。