16歳位の頃、金縛り初体験をした。

「ウオッ!」

初体験を喜んだ数秒後、得体の知れない変な雰囲気がガーーーッと襲いかかって来るような恐怖感。
声は出ず体も動かない。

その雰囲気が発せられているのは足元の床の間。
家は無宗教だったのでその床の間にはカーテンが付けられ物置にしていた。

激しくなる一方の金縛りと恐怖・・・。
数秒後、『それ』は姿を現わした。

床の間から這い出て来たのは、ボロボロの産着をまとった赤ん坊。
しかも腐っている・・・。
私を睨みつけながら、ゆっくり、ゆっくりと私に向かって這って来る。
もの凄い怒りと殺意を発しながら・・・。

自分の目が開いているのか、閉じているのかさえも分からない。
それを確かめるすべも無い。
それなのに、はっきり見えるのだ・・・。

「殺される」

そう思った。

怖い、助かりたい、死にたくない。
必死に「南無南無」って祈った。

しかし、金縛りは全く解けない。
その赤ん坊が、少し笑った。
小さい牙が見えた。

とうとうそれは、私の布団の上まで到達した。
ゆっくりゆっくりと、布団越しに私の体の上を這って来る。

「アカン、殺される」

口元まで掛けていた布団から、『それ』がぬっと顔を出した時、自分は死ぬんだっていう気がして、狂いそうだ。

怖い、怖い、怖い、怖い。
その間にも赤ん坊は確実に這い上がってくる・・・。

お腹の上まで来た。
胸まで来た。
鎖骨の辺まで・・・。

「ああ、もうあかんのか」

『それ』が布団のふちから顔を出した瞬間、私の体は右横に吹っ飛んだ。

顔を出した瞬間と、金縛りが解けた瞬間が同時だったのだ。
逃げよう逃げようとしていた体は解けたと同時にはじけ飛んだ。
妹にしがみつき、「怖い怖い怖い怖い」と30回は言っただろうか。

あれは何だったんだろう。
それ以来、数々の目撃をしてきたが、「殺される」というくらいの恐怖はあれっきりだ。