小さい頃、田舎のじいちゃんの家で一人で留守番したときの話。
じいちゃんの家は二階建てで、畳敷きの和室が一階に四室、二階に二室。
廊下や台所、洗面所などは板張りになっている。
一階の四室のうち三室はまっすぐ一列にくっついてる形で、部屋と部屋を仕切る襖を全部開けるとつながってひとつの大部屋みたいになる。

俺はその三部屋の真ん中にあたる居間でTVを見つつくつろいでいた。
夕方、そろそろ暗くなってきた頃、トイレに行きたくなった。
居間を出て廊下を歩いていくと、途中に二階への階段がある。
そのとき、あれ?っと思った。
上から明かりが差している。
二階の部屋に電気がついてるらしい。

その日は一度も二階には上がらなかったし、変だなーとは思ったが、とりあえず消そうと思って階段を上がっていったんだが、いきなりビビった・・・。

二つある和室の電灯が、両方とも豆電球だけぽつんとついてる・・・。
さっき見たときは、普通に蛍光灯がついていたはずなのに・・・。

途中で消えたとしても暗くなれば階段登ってく途中で気づくはず・・・。
いつこうなったのか全くわからなかった。

怖くなったのですぐに豆電球消して階段を駆け下りた。
その後、ガクブルしながらトイレへ・・・・。
でも、トイレの電灯は普通についたし、何かが追っかけてくる気配もなかったので、用を足してるうちに落ち着いてきた。

結局「最初のは見間違いで、誰かが豆電球だけ消し忘れたんだろ」の結論に達し、「なーんだ俺馬鹿じゃん」、とかなり強引に片づけてトイレを出た。

当然ながら帰りも同じ階段下を通る。
多少ビビリつつ上を見上げてみたが、二階は真っ暗だった。
「異常なし!」と通り過ぎ、居間に入る前にもう一回振り向いてみた。

ついてる・・・。

さっきと全く同じ。
薄暗い廊下に、二階からの電灯の光が細長く洩れている。
この時点で俺半泣き。

しかし、じいちゃんばあちゃんが電気の消し忘れとかに厳しい人だったので、このままにしとくと俺が怒られる・・・と思いつけっぱなしだったTVの音量を最大にしてからまた行った。(ときにはペナルティで小遣い減らされたので死活問題だった)

階段下からは直接二階の電灯を見ることはできないが、下に立つと明らかに二階の蛍光灯がついてる。
怖いので、階段の上にある小さい電灯をつけて、なるべく上見ないように登っていった。

あと五段くらいまで登ったとき、二階が暗いのに気づいた。
さっきまで何となく感じていた二階からの光がない。
階段の電気だけ。
そーっと顔を上げると、豆電球だけついた電灯がちらっと見えた。
そこで限界。

ダッシュで階段降りて居間に駆け戻り、廊下に面した障子を全部閉め、さらに一階の三部屋のふすまを全開にして電気を全部つけた。
こうすれば一階の部屋が残らず見渡せるし、かつ廊下から何か来ればすぐわかる。
そのまま心臓をバクバクさせながら待つ。

何も起こらない・・・。

そのうち、大音量のままだったTVがうるさくなってきたので、少し下げようと畳に落ちていたリモコンを拾おうとした。
前屈みになった瞬間、電気とTVが一斉に消えた。

いや、完全に消えたんじゃない。
三つの部屋の電灯全部に豆電球だけがついている。

暗いオレンジ色の光にぼやーっと照らされる畳敷きの広い部屋。
俺は「おあーーーーーー!」とか何とかわめいて家の外に飛び出した。

その後、俺は近くの公園でガクブルしていたのを、帰ってきたじいちゃんばあちゃん、両親に発見され、連れ戻された。
家は玄関の鍵開けっ放し、家じゅうの蛍光灯つけっぱなし(TVも)状態で、めちゃくちゃ叱られた。
お化けが出たーと一応訴えてみたものの、全く相手にされずに終了。

それ以来俺は豆電球が怖くなり、寝るときも電気は全部消すようになった。
で、後日談というか、後になってあれ?と思ったことがひとつ。

俺がいたのは和室三つをつなげた部屋だったから、電灯も三つあった。
でもあのとき、三つ並んだ豆電球の後ろにもうひとつ豆電球がついていた。

他の三つより少し暗くて色も赤っぽいやつ。
そしてその後ろに、何か黒いものがぶらさがっていた、ような気がする・・・。
とりあえず、その後じいちゃんの家で変なことは起きていないが、ただ一度だけじいちゃんが俺に「知っとるぞ。お前は嘘をついていない・・・」とだけ言ってくれた。

じいちゃん・・・何か知ってるんだったら教えてくれよ・・・。