10年くらい前の体験談を書く。

俺は遠方に暮らす婆ちゃんに懐いてて、よく電話かけてた。
その日も婆ちゃんの声が聞きたくて、電話番号を押した。
でもいつもとは違った。

受話器の向こうから聞こえたのは心電図の音ていうのかな?

『ピーン・・・ピーン・・・』

みたいな等間隔の電子音が聞こえてきた。

最初、電話機が壊れたのかと思ったんだけど、向こうから声が聞こえてきた。

「もしもし?」て凄い低いおっさんの声で話しかけてくる。
驚いたんだけど、なんか話さなきゃと思った。

「あ、◯◯さん(婆ちゃんの苗字)じゃないですか?」

「・・・違います」

短いやりとりの最中にも、後ろから電子音が聞こえてた。

「すいません。間違えました」

俺は間違い電話をかけてしまったらしい。
婆ちゃんちと似た番号の病院か何かにかけてしまったんだ、と瞬時に理解した。
謝って、受話器を置いた。

でも、その後、気づいた。
当時、婆ちゃんちにはよく電話をかけるから、短縮ダイヤルに登録してあった。
ボタンひとつ押すだけだから、間違い電話なんてかかるはずがない。

不思議に思いながら、もう一回ボタンを押すと、普通に婆ちゃんちに繋がった。
そのときは、変なこともあるもんだ程度にしか思わず、婆ちゃんと話した。
次の正月には遊びに行くからとかそんな他愛もない話をした。
そのときはなんの変哲もなかった。

婆ちゃんが亡くなったのはそれから一週間後だった・・・。

婆ちゃんの死に不自然なことはなかったらしい。
眠るように亡くなったと聞いた。
悲しかったけど、次第にその悲しみも薄れていった。

それから数年後の話。

当時、生まれて初めて彼女ができた俺は毎晩のように電話をかけてた。
その日も、同じように携帯からリダイヤルを押した。

「もしもし?俺だけど」

いつものように話しかけた。

「・・・もしもし?どちらですか?」

電話に出たのは彼女じゃなかった。低いおっさんの声。

すぐ後ろで『ピーン・・・ピーン・・・』て電子音が等間隔に鳴ってるのに気づいた。

「すいません。間違えました」

謝って、通話を終了した。

なぜか俺の心臓がバクバクいってたのを覚えている。
携帯のリダイヤルだから、間違ってかかることなんてないと思うんだけど・・・。
画面には彼女と通話した記録が表示されてた。

それから一週間後、彼女が交通事故に遭った。
といっても、足をひねった程度で命には別状はなかった。
ブレーキの切れた自転車と衝突しそうになって、とっさに避けたらしい。

あの心電図みたいな電子音との関連性は今もわからない。
でも、仮に病院に間違ってかかったとしても、心電図は聞こえないと思う。
ああいうのって、手術室とかで鳴るもんじゃないのかな?テレビドラマでしか見たことないけど。
あれ以来、変な病院には繋がらない。

なんか思い出したので書きました。
読んでくれてありがとう。