俺の家には何もないが趣味で郷土史研究やってるもんで、聞き取り調査などで旧家、豪族や地侍の子孫を尋ねることもよくある。
オカルトかどうかはわからんが不思議な話は結構耳にするね。

ある戦国期の城主の子孫を尋ねたときのお話。
御当主は亡くなっていて60代の奥さんが迎えてくれた。
いろいろ古文書を見せてもらったが、女性だからかあまり自家の歴史に詳しくはなく、こちらにいろいろ聞いてきた。
ご主人も特にあまり話さなかったそう。

で奥さんが「だいぶ昔の話になりますがこんな事があったんですが・・・」と、まだ子供がいない時に離婚の危機があったらしい。
するとある夜、夢を見た。
甲冑を着た武者と赤子を抱えた身分がありそうな女性が立っていてこちらをじっと見つめていたそうだ。
そしてすべては聞き取れなかったが「・・・絶やさんでくれまいか・・・」「・・・願い申さん・・・」と、この二言は何度も言っていたので覚えていたそうだ。

まわりは明らかに時代が違う建物の部屋で外からは時代劇の合戦シーンのような声(鬨の声?)や音が聞こえていたらしい。
目が覚めるとあまりにリアルな夢だったのでかなり怖かったそうだ。
離婚も考えてる精神不安からあんな夢を見たのかなと思ったそうだが、御主人にも言えずに毎日が続いた。

御主人とのギクシャクはすぐにはなくならなかったが、なぜか夢のことが気になりだしていた。
寂しそうな武者の時折強く懇願するような視線、奥方らしき人は赤子と奥さんをゆっくりと交互に見ながら優しく微笑んでいた。

「なんだったのだろう、あれは・・・?」

いつしかギクシャクも薄まり、夢のせいかはわからないが奥さんは自分の子供が欲しいと思い始めたらしい。
そのうち長男出産、2年後には次男出産・・・。
そして退院した産後間もない頃、再びあの夢を見たのだ。

以前と変わらない景色・・・しかし今度は静かだったそうだ。
武者と女性は何も言わずただただ嬉しそうに微笑んで・・・。

俺は話を聞いていて途中から鳥肌が立っていた。
奥さんの話が終わると少し落ち着いてから俺は説明しはじめた。
○○家の先祖は敵に攻められ落城する前に一子を家臣数人に託し落ち延びさせていた事。
そして土着したのが現在の奥さんが住んでいる所から近い場所で御主人はその直系である事。

その2人はもしかして落城で自害したといわれる城主の○○と奥方ではないか?
奥方が抱いていたのが落ち延びさせた御主人の先祖ではないか?
女性には奥手だったらしい御主人が再婚できない事も考え、子孫が絶えないように奥さんに離婚を考え改めるように訴えに来たのでは?と。

先祖に起こった出来事を初めて詳しく知った奥さんは少し困惑しながら「・・・そうかもしれませんね。いや、きっとそうだと思います。」と

2人のお子さんは今ではそれぞれ家庭を持ちお孫さんもいらっしゃるとか。