基本的にこういった類いの話って信じていなかったのですが・・・。

今から10年ほど前のこと。
当時20代前半だった私は、友人に誘われ結構有名な心霊スポットなる場所に連れて行ってもらいました。

そこは所謂『公園墓地』で、その中に小さな池がありました。
その池の傍はちょっとしたロータリーになっており、そこに小さなお地蔵さんが祀られていました。
聞くところによると、かつて○○○ちゃんという子供がその池で遊んでいて亡くなってしまい、それを不憫に思った親御さんがお地蔵さんを建てたということでした。

私が高校生の時分から、ロータリーの前でバイクを吹かしていたらエンジンが急にかからなくなったとか、フルフェイスのヘルメットをかぶっているにも関わらず、顔を左右に引っ張られたとか、帰り道で車の車輪が脱輪したなどという話を聞かされていましたので、ちょっと興味があったので軽い気持ちで行きました。

季節は5月も終わる頃。
一通りその墓地を周り、僕らは帰路に着くことにしました。
帰りの車の中で、妙な肌寒さを感じた僕は友人に言いました。

「なあ、なんか寒く無い?」

友人は「いいや」と首を振ります。

「悪い、ちょっと窓閉めてくんないかな」

僕がそう言うと友人は窓を閉めてくれました。
車は深夜の国道を走っていました。

しばらくよくある若者のバカ話をしていた時、僕はある事に気付いたのです。

『・・・・ちりん、ちりん・・・・・ちりん・・・・』

今まで全く気付かなかったのですが、僕らのすぐ後ろから、いや、言うなればシートのすぐ後ろから聞こえる鈴の音でした。
僕は「なあ、この車に鈴って付いてたっけ?」と車の所有車である友人に訪ねました。

僕の問いかけで友人も気付いたらしく、「何?この音?何?」と不思議がりはじめました。
それは本当に何もない、僕らのシートの間の空間から聞こえていました。

その鈴の音は気付くとどんどん大きく、しかもはっきり聞こえるようになり、終いには『ちりちりちりちりちりちりちりちり!』と激しく揺すったかのように鳴り続けました。

「なんだこれ!?」

あまりの不可解さに驚いた僕は言いました。

すると友人が言いました。

「まずい、つれて来ちゃったかも知れない・・・」

そんなばかな事があるか!
それが正直な感想でした・・・。

でも、確かにその不可解な音は僕らの傍にありました。
しかも僕もよく知っている友人の車、鈴の付いたものなど無い事も知っていましたし、今までもそんなことは一度だってありませんでした。

しかし確かに存在している『それ』に気味の悪さを感じた僕は、霊感の強い友人に言われるがまま「遊び半分で行ってごめんなさい、僕らは何も出来ませんからお帰り下さい」と何度も何度も口に出して言いました。

すると『ちりちりちりちりちりちりちり・・・ち・・・りん』と、ついには目覚まし時計のように鳴っていた鈴の音が止んだのです。

「何なんだこれ・・・」

僕がそう言うと友人は「いや、もう何も考えるな。忘れるんだ、いい?何も無かったんだ」といってそれ以来この話題に触れる事はありませんでした。

僕は直感で『ああ、そういうことなんだな』と理解し、その日は何事も無かったように自宅に帰ったのでした。

次の日、当時学生だった僕は、昨夜の事件が物珍しく初めて体験した不可解な出来事に軽い興奮を覚えていたため、他の友人達におもしろおかしく吹聴して回っていました。

暫くすると、昨日一緒に行った友人が登校して来ました。

その友人は僕の顔を見るや否や「やばいかもしれない。○○○ちゃん、付いて来てるかも・・・」と青ざめた顔で言いました。

「何だよそれ!どーゆうことだよ!」

僕がそう言うと友人はゆっくり昨日の晩の事を語りはじめました。

「昨日俺は帰ってから風呂に入ったあと、ベッドに横になりながらラジオを聞いていたんだ。別に真剣に聞いていたわけじゃないんだけど、歌の途中でフェードアウトしていったんだよね。ああ、CMなんだろうなって思ってたんだけど、いつまでたっても音が鳴らないんだよ。コンセントも繋がってるし。あれって思って、ボリュームを上げたんだよね、そしたら・・・・」

「そしたら、何?」

「・・・・子供達が笑ってるんだよ・・・・」

それを聞いたとたん、僕らの空気が張り詰めました。

「・・・やばいと思ったから速効切ったよ、ラジオ・・・・。このまま何かあるようなら、一緒にお払いに行こうな」

友人はそう言うと教室を出て行きました。

これは本当に洒落にならん、僕も薄々感じはじめていました。
そもそも一緒に行ったその友人は、とても霊感が強いことは知っていました。

彼の家に遊びに行った時、無造作に壁に張り付けられたオニヤンマの標本を見て、何故むき出しで、しかも一匹だけあるのか聞いた事がありました。

彼によると、珍しく首都圏に降った大雪の日、窓の外を眺めていると大きく黒い物がふらふらと飛んで来て、彼の目の前に落ちたそうです。
何だろうと窓を開けて見ると、そのオニヤンマだったそうです。
そのオニヤンマは既に死んでいました。
真冬にオニヤンマなんて不思議な事があるもんだと思っていたら、電話が鳴り、彼の親友がバイク事故で亡くなったとの連絡が入ったそうです。

だから、「このとんぼは捨てられないんだよ」と、友人はそう教えてくれました。

その友人だから聞こえたのだろう・・・。
僕のように霊感のないやつには、彼が体験したような事は感じないだろうと、僕は自分に言い聞かせて、少しでもこの不可解な現象から逃れようとしていました。

そして、それはその通りになったかのようにみえました。

それから何ヶ月かが過ぎ、そんな不可解な事件も忘れはじめたある日のこと。

僕は友人達と夜遊びをして自宅に戻ったのは深夜3時過ぎでした。
ベッドに倒れ込んで、シャワーを浴びてから寝るか、このまま寝て朝入るかを、僕は薄いまどろみの中で考えていました。

僕は足の指でステレオのスイッチを入れ、たばこに火を着けました。
チューニングは伊集院光のオールナイトニッポンを流していました。

音が無いからと思いつけただけでしたが、巧みな話術と軽い笑いでしばらく聞き入ってしまいました。

そして『そいつ』はやって来たのです。

放送中、伊集院が面白い話をしている最中に、突然、「きゅでょいhfcかgでぃk」と、何を言っているかは全く聞き取れませんでした。

テープを物凄く早回したような感じと言えば伝わるでしょうか。
子供の声で、明らかにベースとなる放送とは違う音量で、通常では考えられないカブリ方をして、それは割り込んで来ました。

僕は最初、何が起こったのか全く理解できず、ただ、普通では無い状況である事だけは理解しました。
自分の心音が自分でも解るくらいに、早鐘のように鳴っているのが解りました。

しばらく何事もない状態で番組は進んでいます。

10分、15分・・・やはり聞き間違いだったか、そう思いはじめた時、「うきゅdhkhこいじょいjんかしかskdらsclば!」

もはや内容など耳に入りませんでした。
ラジオの中から聞こえる楽しそうな笑い声が作り物にしか聞こえませんでした。

○○○ちゃんだ、○○○ちゃんがやってきた。
僕は悟りました。
それからはもうやりたい放題でした。

ジングル(オールナーイトニーッポーン♪)、CM中、とにかく至る所でテープの早まわしは聞こえて来ました。
まるで僕が怖がっているのを楽しむかのように・・・。

僕は仏壇のある部屋に行き、般若心経を手に持ち、「僕は何も出来ませんからお帰り下さい、ごめんなさい、ごめんなさい」と何度も心の中で言い続けました。

その夜は漠然とした不安、言い様のない恐怖に震え続けていました。
意を決してラジオを消そうとした最後の時、今まで何を言っていたか解らなかった言葉で、たった一つだけハッキリと聞き取れた言葉がありました。

それは『おにいちゃん』でした・・・。

身を浄める意味を込めて風呂に入ろうと時計に目をやると3:45で何故か文字盤が全点灯していました。
どこをどうやってもそんな風にはならない時計が、まるで続き番号を楽しむ子供の仕業のように。

僕は半ばあきらめ、風呂に入り、その日は眠りにつきました。

次の朝、昨夜の出来事を家の者に話しました。

○○○ちゃんのこと、そして昨夜の不可解な事を。

母は笑って
「寝ぼけてたんじゃ無いの?」と、植木に水をやりながら言いました。

「そんなわけないだろ、冗談なんかじゃ無いって!霊っているよ絶対!」

ムキになって反論する僕を笑いながら軽くあしらいました。

僕は昨日の出来事からどうしてもラジオを聴く気になれず、レコードをかけながら着替えを始めました。

普通に問題なく音楽が流れ、シャツの袖に腕を通していた時、『うおおおおぼおおおおおおおおおおおおおお』と男の野太い声で、しかもかなりの大音量の叫び声が突然流れたのです。

突然の出来事にあぜんとする母に「な!聴いただろ!今の!やつらだよ!もう絶対お払いに行く!」

後で分かったのですが、○○○ちゃんにいったのも水曜日、友人が始めて聴いた不可解な声も水曜日、僕が体験した出来事があったのも水曜日。
偶然にしては出来過ぎです。

あれからは○○○ちゃんには一度も行っていません。
そしてラジオも深夜に聴く事はなくなりました。

それからというもの、僕はその手の類いの者に敏感になりました。
何度となく説明のできない出来事に遭遇しました。
それはまたの機会にお話出来ればしたいとおもいます。

これらの経験で一つだけ分かった事、それは確かに『何か』は存在すると言う事です。
みなさんもいわくのある場所、心霊スポットに気安く近付かない方がいいと思います。
これはまぎれも無い事実なのですから。