学生時代に、河原で出会った娘の事を書きます。

快晴のすごく天気のいい日に河原の土手を歩いていたら、土手下の川のほとりに女の子がいたんです。
後ろ姿しか見えませんでしたが、背丈からすると中学生くらいに見えました。

膝ほどもある草むらの中を、その娘は機嫌良さそうに歩いていました。
まるでスケ-ティングでもするかのように、身体を左右に振りながら滑るように、スイッスイッと前に進みます。
その動きは少し遠目から見ても、きっと御機嫌な曲でもハミングしているんだろうなと思うほどリズミカルでした。
肩にかかる程度の長さの髪と、少し場違いとも思えるほどフリルの多いワンピ-スがその娘の動きに同調して左右に揺れていました。

その日は木の枝や草を揺らす風もなく、他に動くものが視界になかったので、僕は何となくその娘を目で追いながら歩いていました。

よく見ると何だかその娘は左右に揺れながら、まるで映像が少しずつ消えてゆくように薄くなっていくんです。
息が詰まるほど驚きましたが、真っ昼間の青空の下という事もあり、不思議と恐ろしい感じもしませんでした。

それでもその娘が前に進んでいるにも関わらず、足下の草に踏まれたような気配も動きもない事をハッキリ確認した時にはあらためて全身が凍りつきました。

気がつくと、もうその娘の身体を透して背景が見えるぐらいに消えかかっています。

僕は咄嗟に土手を駆け下りてその娘に向かって走りだしました。
なぜそうしたのかは自分でも解りませんが、消えてしまうという気持ちが自然にそうさせたのだと思います。
あり得ない現象を目の当たりに、驚きと戸惑いはあったものの、まだ十代前半ぐらいにしか見えないその娘自体が、恐く感じた理由でもありませんでしたから・・・。

僕の行動を察したかどうかは解りませんが、僕が駆け寄るとその娘の動きはピタッと止まりゆっくりこちらを振り向きました。
前髪が鼻を覆う程長くて、キュッとむすんだ口元しか見えませんが相手からは僕はしっかり見えていた筈です。

一瞬だけ、ふっと口元が緩んだかと思うと、その娘の姿は完全に消えていってしまいました。

不思議な出来事が立て続けに起きた仙台での学生生活でしたが、中でも印象深い想い出です。