私が30年ほど前に聞いた話です。

ある会社員が昭和40年代半ば、仕事でフィリピンの首都マニラのあるホテルに泊まった時、ホテルの部屋をノックする音が聞こえてドアの前まで来たものの、時計を見れば深夜の0時半。

常識的に考えればホテルのボーイでもよほどのことがない限りこんな時間にノックするなんて考えられないし、それにこのホテルには知り合いはおろか会社の同僚も宿泊していないはず。

恐る恐るドアを開けたらなんと一人の警官が立っていて、笑顔でカタコトの日本語で「コンバンワ、コレヤスクシトキマス。カイマセンカ?」と言ってホルスターからなんと拳銃を取り出すではないですか。

その人はその場で凍りつき、目の前の警官が自分の拳銃を買ってくれとお願いに来たことの意味を理解したのですが、その人は偽警官と疑って丁重に断りドアを閉めたということでした。

日本では絶対にありえない光景で気になり、明くる日にホテルのフロントに聞いたら現地の本物の警官で、日本人が泊まってる部屋番号をフロントで聞いて格安で売るバイトをしてるのだと。
さもこの国では日常茶飯事だと言うような口振りで平然と話す始末。

今はどうか知りませんが、当時は現地の警官の給料はかなり安くて多数の警官が副業で拳銃の販売の裏バイトをしているとのことでした。

特に日本人はほとんどの人が拳銃に無縁なので他の国の人に売るよりも商売になりやすいとのことでした。

チェックアウトの最後にフロント係が言った言葉は「マニラは治安が悪いので拳銃の一つくらい持ってた方がいいですよ。警官が売る拳銃は安くて性能もいいので安心です」と平然と言ったそうです。

今もこういう警官の裏バイトがあるかどうか知りませんが、この話は実話です。