今のバイトの同僚の話。

その同僚が昔、ピザ屋の配達員バイトをやっていた頃、とあるマンションの住人から、ピザの配達の注文がありそいつがピザを配達することになった。

配達する部屋は4F。
早速暗い夜道をバイクでマンション配達に行った。
そのマンションに着くと、同じような建物が2棟。
今回の配達はどうやら、A棟の4Fと言うことで、暗くて見えにくい中、A棟であるかどうかを確認し、そいつは中に入った。

マンションの中に足を踏み入れると、そいつは異変に気づいたそうだ。
マンションの中は外とは違い、やけに空気が重く淀んでいた。
そして、どこの部屋までかは分からないのだが、昔ながらの黒電話がどこかの部屋から鳴り響いていたそうだ。

そんなどことなく異空間なマンションに同僚は気味の悪さを感じた。
さっさと配達を済ませようと、急ぎ足で階段を上がる。
そして三階まで上がった所で、同僚は異変に気づいた。

4階に上がる階段が無いのだ・・・。

どこか別の場所に上る階段があるのかと廊下を一通り歩いてみたが、やはり、どこにも4階に上がる階段が無い。

部屋番号を間違えたのか?と思いつつ、ピザに貼られた住所を見るがやはり、そのマンションの4Fが配達場所。

呆然としている間も、同僚は黒電話の音を同じ大きさで聴いていた。
どこの部屋が音の発信源だろうと、移動すれば大なり小なり音の大きさは変わるはずなのに。
さすがに気味が悪くなったので、もしかしたら隣のB棟の部屋かと思い一度外に出ることにした。

B棟もA棟も高さ的には変わらなかったそうだ。
そして事実、B棟はきちんと4Fまで行けたそうだ。
部屋番号が同じ部屋があったが、表札を見てみると注文した人と名前が違う。
ああ、やはりさっきの棟で良かったのかと、もう一度戻ってA棟に入ってみると、先ほどまで鳴っていた黒電話の音は鳴り止み、今度は普通にさっき階段が無かったところに普通に階段がちゃんとあって4Fまで行けたそうだ。

で、ちゃんと部屋番号もあってそこの居住人は、ちゃんとピザを注文していて無事配達完了。

配達が終わった後、同僚は怖くなり逃げるように自店に戻ったが、他の同僚にこの話をしても誰からも信じてもらえなかったそうです。