その昔、山の神様が目玉を量産し、それまでめくらであった山の生き物たちに眼をあげることにした。

山の神が「明日の朝、みんなに目玉配るから、欲しい奴は並べ」というので、それまで目がなくて苦労し通しだった山の生き物たちは喜び勇み、山の神の前にぞろぞろと列を成した。

しかし、どういうわけか目玉の数が足りず、残りはフクロウとミミズというところになって、目玉が二つしかなくなった。
本来なら一人に二つずつ、合計四個なければならない。

山の神様が「申し訳ないが、目玉が二つしかなくて一人一個しかやれないが、どうする?」と聞くと、フクロウとミミズは残念がったそうだが「それでもいいです」と言って、一人一個ずつ目玉を貰った。
こうして、フクロウとミミズはなんとも不気味な一つ目の生き物になった。

しかし、小狡い性格だったフクロウは、なんとしても目玉が二つ欲しいものだと考えた。
そこで、山の神の下から帰る途中、ミミズに「ちょっと休んでいかないか」と声をかけ、ある木の下で休んだ。

もともと歩くのがあまり得意ではないミミズのこと、木陰に休んだ途端に疲れて寝てしまった。
フクロウはこれ幸いと、ミミズの顔についた目玉を取ると、自分の顔にくっつけた。

「あぁ、やっぱり目玉は二つあるに限る」とほくそ笑むと、フクロウはバサッと羽を羽ばたかせ、ミミズの手が届かない空の上へと飛び立ってしまった。

驚いたのはミミズだ。
しばらく経って起きてみると、フクロウはおらず、しかもせっかく貰った目玉もなくなっている。

「あの野郎、俺を騙して目玉を盗んでいきやがった!許せん!」と憤激した。

しかし、ミミズはいまや再びめくらになりフクロウがどこにいるかもわからず、おまけに空を飛ぶことも出来ない。
そこで、ミミズは休んでいた木の上にフクロウが止まっているものと当て込んで、木の根元に穴を掘り始めた。

「木の根元を掘ってこの大木を倒せば、あの腐れフクロウも面食らって落ちてくるに違いない。待ってろ、今すぐ目玉を取り返してやるからな・・・」と呟きつつ、ミミズは木の根元へと深く潜っていった。

後日、フクロウが仲間の鳥の許へと行くと、仲間の鳥たちは驚いた。
フクロウの顔に目玉が二つ、くっついていたのだ。

「お前、山の神様から目玉をひとつしかもらえなかったはずだが、そのもうひとつの目玉はどうしたんだ?」

ある鳥が聞いても、実は盗んだものです・・・とは言えないので、フクロウは答えない。
鳥だけでなく周りにいた山の生き物たちも事情を察し、大いに怒った。

「お前は前々から狡い奴だとは思っていたが、まさかミミズから目玉泥棒をするとは。お前のような盗人はお山から追放だ!」

口々に野次られ、なじられ、フクロウはすっかり居た堪れなくなって仲間の下から逃げ出してしまった。
もう顔を上げて日の下を歩くことも出来なくなり、人気が消えた夜の世界でしか自由に生きられなくなった。

こうして、ミミズは地中で、フクロウは夜の世界で生きるようになったそうな。