あるところに、父母と娘二人の家があった。
姉妹のうち妹の方は後妻の子供で、姉娘は当然の如く母親に苛められていた。

ある日、父親が畑から帰ってきたときだった。
父親は鍬を畑に忘れてきたことに気がついた。

父親「おや、畑に鍬を忘れた。今からまた戻って取ってこよう」

それを聞いた心優しい姉娘は、「父さんは疲れたろうから私が取ってくる。父さんは休んでいてください」と言い、畑に走っていった。

畑に行くと、確かに鍬はあったものの、その鍬の柄に三匹の鳩が止まっていた。
姉娘は「鳩も疲れて眠るところなんだ。ごめんね」と言い、どこかから止まり木を見つけてくると、一匹ずつ鍬の柄から降ろし、その止まり木の方に止まらせてやると、鍬をかついで持って帰った。

鳩たちは姉娘の行いに感心し、「驚くほど優しい娘だ。何かお礼をしよう」と呟いた。

果たして姉娘が家に帰ると、後妻の母さんは驚いた。

「お前、その服はどうしたんだい」と訊かれて、姉娘も自分の身体を見て驚いた。
姉娘はいつの間にか立派な振袖を着ていたのだった。

「お前、人様のものを盗んできたのか」と問い詰める後妻の母親の言葉を、姉娘は必死に否定した。

「盗んでねぇ。私はこれこれこうしてきたんだ」と事の仔細を話すと、父親は「それはお前の行いに鳩が感心して、礼をしたんだ」と言い、姉娘を褒めた。

後妻の母親は姉娘を恨めしく思って、父親に「明日も畑に鍬を忘れてきてくれ」と懇願した。
父親が言われたとおり鍬を忘れて帰ると、継母は妹娘に「ほら、鍬を取ってきなさい」と送り出した。

妹娘が畑に行くと、昨日と同じように、鳩が三匹、鍬の柄に止まっていた。
それを見た妹娘は「畜生の癖に人の鍬に止まって休むなんて!」と怒り、そこにあった木の棒を振り回して鳩を追い立て、鍬を持って帰った。

三匹の鳩は「なんとも意地悪な娘だ。『畜生の癖に』と言ったところを見ると、よっぽど畜生が好きらしい」と話し合った。

妹娘が帰ってくると、父母は大いに驚いた。
帰ってきた娘の顔は、キツネそのものの顔になっていた。
尻尾まで生えてしまった妹娘は、そのうち本当のキツネになってしまい、どこかに逃げていってしまったという。