数日後、バイトで吉村と一緒になった
早速、吉村に菜美とのことを聞いてみた。

俺「吉村さん、山田さんとホントに付き合ってるんですか?」

吉村「そうだよ」

俺「でも、山田さん、吉村さんと話したこともないって言ってましたよ」

吉村「話さなくても、俺たちは心が通じ合ってるんだよ」

俺「・・・(゜Д゜)」

俺「でも、まだ話したことない人とどうやって仲良くなるつもりなんですか」

吉村「それを考えるのは、相談に乗ってるおまえの仕事だろ」

俺「・・・(;゜Д゜)」

吉村「おまえ、赤い糸って信じるか?」

俺「はあ」

吉村「俺と菜美は、一つになるってことが運命で決まってるんだよ」

俺「・・・(;;゜Д゜)」

吉村「まだ、おまえには分かんないかもな。お前も運命の人にめぐり合えば、きっと分かるよ。強く引かれ合う力ってのがさ」

俺「・・・(;;;゜Д゜)」

俺「山田さんとデートって、したことあります?」

吉村「あるよ。いつも帰り道、一緒に歩いてるよ」

俺「え?並んで歩いて、手なんか繋いだりするんですか?じゃあ、おしゃべりしなくても十分ラブラブじゃないですか」

吉村「いや、手は繋いでない。まだ少し距離をおいて歩いてるよ。でも、俺たちには十分なくらいの近い距離だよ。その距離なら、俺たちは心が深く通じ合うんだよ」

俺「・・・で、どれくらいの距離で歩いてるんですか?」

吉村「50メートルくらいまで近づけば通じ合うよ」

俺「・・・(;;;゜Д゜;)」

俺「そんな大切な人を、どうして風俗に沈めようなんて思うんですか?」

吉村「これは俺たちの試練なんだよ。だけど、俺たちは二人の力で、必ずこの試練を越えてみせるよ。彼女も辛いだろうけど、俺だって辛いんだよ。俺たちはこの試練を必ず乗り越える」

俺「・・・(;;;゜Д゜;;)」

吉村「俺たち二人のことを邪魔するやつらは、必ず俺が叩き潰すから。俺が、必ず菜美を守るから」

俺「・・・ガクガクブルブル」

吉村から話を聞くまで半信半疑だったけど、菜美の言ってることは本当だった。
こんな危険なやつがいたんだ。
実際にこんな人がいるなんて思ってなかったから、手が震えるくらい驚いた。

菜美に守ってやるといってしまった手前俺は、有事に備えて飛び出し警棒を買った。

俺は店長に事件の顛末を話して菜美の身の安全のために吉村の両親と話したいから吉村の実家の住所を教えて欲しいと頼み込んだ。

店長は、吉村のおかしいところに心当たりがあるらしく俺の話をすんなり信じてくれて「いやー。予想以上にとんでもねえやつだなw」と笑ってた。

だが、個人情報の提供については、しばらく考えた後、やはりバイトの個人情報を教えることはできないと言った。

俺はしつこく食い下がった。

店長「うーん。大変なのは分かるけど、やっぱり個人情報を教えることはできないよ」

俺「そこを何とかお願いします。今はそんなことを言ってる場合じゃないんです。全く無関係の罪もない女の子が、犯罪に巻き込まれるかもしれないんですよ」

店長「話は変わるけどさ・・・あ!この事務所の書類整理の仕事を頼むよ。その棚にある履歴書なんかを、整理してファイリングしておいてくれないかな。俺はこれから1時間くらい出かけるけど、その間にお願いね」と言ってくれた。

店長に深くお礼を言って、俺は仕事に取り掛かった。

吉村はバイト仲間内でも屈指の働かないやつで、ほとんどバイト収入なんてないくせに、都内一人暮らしだった。
自宅と実家がすぐ近くであるので、菜美のように地理的理由で一人暮らしをしているのではない。
意外にも、吉村はいいご身分だった。

たぶん、俺が店長に話したからだと思うが話した後すぐ、吉村はバイトをクビになった。
実際、ほとんど仕事しないし、よく休むし、バイト仲間からも嫌われてるやつだったのでクビにする理由はいくらでもあった。

俺は、菜美にさっそくgetした吉村の個人情報を伝え親御さんに話して、もう近づかないよう吉村の親に警告してもらうことを提案した。

しかし、菜美は複雑な顔をして、親には話したくないと言った。
菜美を大学に通わせるために、菜美のお母さんはかなり無理をしてるようで毎晩、体力的に限界近くまで働いているらしい。
疲れてるお母さんに余分な心配掛けたくないと菜美は言った。

菜美からの相談に乗ってるうちに、俺たちは、次第に事件以外のことも色々と話すようになった。

菜美は母子家庭であまり裕福ではなく仕送りが少ないために、生活費は自分のバイトで捻出していた。
また卒業のためには奨学金獲得が必須であるため、大学の勉強で手を抜くわけにもいかず、家に帰ってからも自習。
このため、普通の大学生のように楽しく遊ぶ時間なんてほとんどない生活だった。

東京でなかなか親しい友達ができないのは、まだ来たばかりという理由以外に、ほとんど遊ぶ時間がないというのも関係してるんだろうと思った。
友達の少なさとは裏腹に、菜美はすごくいい子だった。

色々話すようになって分かったんだが、菜美は、とても同じ年とは思えないほどすごく大人で、しっかり芯を持った人だった。
苦労してるだけあって、周りの人にも優しかった。
俺は、急速に菜美に惹かれていった。

バイト先でのヒアリングで吉村が危なすぎるやつだと分かったので、俺は可能な限り菜美の送り迎えをするようになった。

菜美を自宅まで送った後、一人で夜道を歩いているとき、目の前に吉村が現れた。

吉村「おまえ、どういうつもりだよ?俺の女に手出すんじゃねえよ?」

超びびッた。

菜美がおまえを怖がってるとか、おまえから危害を加えられないために送り迎えしてるんだとか、いろいろ説明したけど、全く無駄だった。

「俺と菜美は心でつながってる」とか「菜美はおまえを迷惑がってる」とか、吉村は根拠のない反論し繰り返した。

もう「菜美と俺は相思相愛」てのを固く信じちゃってて全く聞く耳持ってくれなかった。

話してるうちに「殺すぞこの野郎!」と吉村は俺に殴りかかってきた。

でも、俺と吉村では体格も全然違うし吉村はかなり運動神経が鈍い方だったから、問題なくさばけた。

みぞおちを一発殴ったら、吉村はうずくまって動かなくなった。
うずくまる吉村に俺が、もう一度、菜美は吉村を怖がってて、出来れば会いたくないと思ってると話したら「おまえが、おまえがあああ、嘘を吹き込んでるんだろうううう!!!」と怒鳴って、その後「ウウウウウウウウウウウ」とうなった。

うずくまってうなり声を上げる姿は、本当に獣みたいだった。
背筋に冷たいものを感じて、思わず走って逃げてしまった。

安全なところまで逃げてから、すぐ菜美に電話した。
吉村に会って喧嘩になったこと、何やら物凄い執念だったから、戸締りはしっかりして、今日はもう家から出ないようにということ、何かあったら、何時でもいいから、すぐに俺に電話するように
ということを言った。

菜美からの連絡はその日の夜にあった。
電話ではなくメールだった。

メールには玄関前で音がしたので、菜美がドアの覗き穴から外を覗いたらちょうど吉村もその穴から部屋の中の様子をうかがってる最中でうっかり目が合ってしまったとのことだった。
すぐ近くにいると思うと怖くて声が出せないから、電話ではなくメールで連絡したらしい。

俺は、すぐに警察に連絡するように返信したら警察に電話なんかしたら、通報する声が吉村に聞かれてしまってそれで逆上されて、とんでもないことになるかもしれないって返信が返って来た。

俺は、警察への通報は俺がするということ、すぐ行くから部屋から出るなということをメールで伝えた。

俺は、昔、野球やってたときに使ってた金属バットをバットケースに入れそのまま菜美の家に向かった。

警察は、俺が着くより前に見回りに来てくれたらしいけど周囲をざっと見て、菜美の部屋のベルを鳴らして菜美の顔を見て無事を確認したらすぐ帰ってしまったらしい。

その日、俺は菜美の部屋に入れてもらった。
翌日、菜美は朝早くに出発する予定だったので俺が寝ないで見張ってるから、とりあえず菜美は寝るように言った。

その日が、菜美の部屋に入った初めての日だった。
普通なら、俺たちの関係に少しくらい進展があってもいいんだろうけど、結局、何事もなく終わった。

怯える菜美がなんとか寝付いたのは深夜2時過ぎ。
すやすやと寝る菜美を見てさすがにムラムラしたけど今襲ったら、それこそ菜美を深く傷つける気がして最後の一歩は踏み出せなかった。

その3日後くらいから、菜美のところにも街金が来るようになった。
そのため、俺と菜美は半同棲のような形になった。

だけど俺は、相変わらず菜美には手を出さなかった。
菜美が風呂上りにノーブラパジャマでいたりとかパジャマのボタンとボタンの隙間から胸が見えそうだったりとかかなり危ない状況はあった。

だけど俺は、菜美のいないときに狂ったようにオ◯ニーして精を搾り出したりすることで、なんとか理性を保つことができた。

<続く>