これから話すのは高校の先生から聞いた話。
先生自身が体験したとはちょっと違うのかな・・・。
先生が初めて担任を持ったときいつも窓の外を見る生徒が居たんだって。
その生徒が関わってくる話。

まずはその生徒は何故外を見ていたか、からの体験談・・・。
※以下、「私」は先生のことです。

その生徒は、いつも授業中もひっきりなしに窓の外を見ていた。
変な子だなあ・・・と思ったくらいで特に気に留めなかったそうだ。

で、学校始めには必ずある家庭訪問でその生徒の家にも当然行った。
お母さんはその生徒と一緒ににこやかに迎えてくれて、色々と話した。
私はそのとき、ふとその子の行動を思い出して生徒に質問してみた。

生徒「だって向かいのマンションに焼け焦げの女の人が居るから・・・」

えっ?と思った私に母親は「この子、最近幽霊が見えるんですって」と説明してくれた。

どうやらその子は、中学に上がった辺りから“普段見えない何かが”見えるようになってきたそうだ。
最初はおぼろげだったものが、年を重ねるにつれ段々見えるようになったらしい。

その子曰く「マンションに居る幽霊は昔火事で亡くなった人で成仏出来てない・・・けど、こちらに悪さをする積もりはないから大丈夫」とのことだった。

これが一つめに体験した話。

二つ目。
文化祭での話だそうだ。

先生のクラスは文化祭の出し物は縁日になった。
お化け屋敷と言う案も当然あったが、例の生徒が止めた方が良いと反対したらしい。

隣のクラスはお化け屋敷を企画していた。
準備期間で着々とお化け屋敷を作っていってかなり本格的だったらしい。
だが、その不思議な生徒の話だと、一時的に作った場所にも霊は呼び寄せられるらしく・・・準備3日目、例の生徒が隣のお化け屋敷を中止した方が良いと言い始めた。

明日が公開だと言うのにそんなことはできない・・・。
そのクラスの担任がなんとか説得させた。

半分折れた生徒は「せめてこの仏壇だけは外して下さい」と言った。

それはある生徒が本格的に見せる為にどっかから拾ってきた古い仏壇で、お化け屋敷コースのトリを飾る重要なものだったらしい。
だがそれも聞かずに担任は押し切った。
生徒は「何があっても知りませんよ」とだけ言って不機嫌にクラスに戻った。

その日の午後。
お化け屋敷のクラスの担任が突然倒れて救急車に運ばれた。
原因は不明だったが、例の生徒は運ばれる先生を見ながら「だからいっただろ・・・」と呟いた。
前の件を知っていた先生はその子になにがあったの?と聞いた。

原因はあの仏壇らしかった。

見える生徒「あの仏壇には落武者の霊が見える。ただでさえ霊が集まってるのに危ない。あの落武者は怒っている」

と言うことだった。

担任が倒れたことで不味いとなり、その仏壇は元に戻して文化祭を迎えたそうだ。
二つ目はここまで。

三つ目。
修学旅行にて。

学年が上がり、修学旅行の季節になった。
今年は沖縄に行くと言うことでもちろん平和学習も日程の中にあった。

沖縄に修学旅行で行く学校のほとんどは塹壕の見学も取り入れてるだろう。
その学校も塹壕の見学があった・・・。

壕に入る時、例の生徒は「ここ、危ないです」と強張った表情で言った。

「先生、僕は一番後ろ歩きます」そう言って入った。

塹壕はね、戦争で亡くなった方の怨念が溜まって危険なんだってね。
怪奇現象もしばしば起こるらしい。
今回も起きた・・・。

ガイドが説明をしている時、先生の目の前にいる女子がふらふらと前後に揺れはじめた。
目が虚ろで焦点があっていない・・・。

これってまさか・・・と思った時、「危ない!」と後ろに居た例の生徒が飛び出して女の子の腕を掴んだ。
その瞬間、女の子はつんざくような悲鳴を上げて倒れた。

辺りは騒然。

急遽全員塹壕を出て、女の子の介抱をした。
女の子はすぐに意識を取り戻して、泣きはじめた。
女の子曰く急に意識が遠のいて引っ張られる感覚がしたそうだ。

先生は例の生徒に「なんで後ろに居たのに分かったの・・・?」と聞いたら、女子の肩の方から何本もの腕をが伸びるのを見たそうだ。
それで、あっちの世界に引き込まれると思いとっさに掴んで引き戻したそうだ。

さらには、なんで一番後ろを歩いてたかも教えてくれた。

生徒の列に続いて戦争で亡くなった方たちが這いずりながらついてきていたのだという。
危害を加えられたらいけないから、霊感のある自分が盾になったらしい。

見える生徒「もっとも、被害者は出てしまいましたが・・・」

彼はそうポツリと呟いた。

三つ目はこれで終わりです。
ついでに後日談。

18歳の時が霊感のピークだったらしく、卒業したらパタリと霊を見なくなったらしいです。
今は普通に社会人として暮らしてるそうですよ。