俺の実家は超田舎だ。

わずか十世帯ほどしかない小さな村で、いわゆる限界集落と呼ばれるような場所。
オカルト板の連中がもし訪れたら絶対よからぬ妄想をすると思う。
けど実際は普通にインフラ設備もされてるし、住人も普通の年寄りばっかりだ。
よく都会の人は「田舎は人間関係がおかしい」と言うけど、別におかしいところなんてない。
ただ一つだけ気がかりなのが、年寄りが全員、創◯学会だ。
もちろん俺は違うし親世代も違う。

俺が一度祖母の真似で「南無妙法連華経~」と言ったらもの凄い剣幕で母親から叱られた。
小さい頃は創◯なんて知らなかったけど、なんとなく他の家と違うのは薄々感じていた。(仏壇に花が飾られてなかったり葬式でもお坊さんを呼ばなかったり)
でも別に年寄り連中にも特別な思想なんて無かった。

中学に上がった頃から、他の地域の奴らからヒソヒソ言われることが多くなった。
原因が創◯なのは分かっていたので、同じ村の幼馴染とよく「俺ら創◯じゃねーし」と言っていた。
学校生活の後半はもう他の奴らと一緒に「きのう公◯党の奴ら来たから壁キックしてビビらせてやったわw」とネタにしていた。

去年の春ころ、俺は市内にある大型古本屋に出かけた。
漫画だけじゃなくて色んな本があるんだなーとブラブラしていると、一冊の本が目に入った。

手の平サイズの古臭い本だ。
そして目次を見てビックリ。
なんと俺と同じ町の人が自費出版で出した郷土史だった。
町内にある神社や石碑、誰それの家に伝わる古文書やさらに洞穴など、その由来や経歴まで事細かに書かれている。

「へ~よく調べてるわー。この人よっぽどすること無かったんだなー」と感心した俺は、その本を買って帰った。

家に帰ってから早速読んだが、おかしなことに気付いた。

俺の村だけ極端に項目が少ない。
というか二つしかない。
一つは神社で、もう一つが村の奥に何か祀られているけど、それが何かわかんないし、行き方もわからないというようなえらく抽象的な文章だった。

子供の頃から外で遊んでたけど、そんな物が存在しているなんて知らなかった。
これはさっそく検証しなければ!と俺は外に飛び出した。
しかし念入りに探したがそれらしいのは見つからない。
どうしたものかと沢の水辺をウロウロしていると、近くで農作業していたババアが声を掛けてきた。
※方言で書くの嫌なので標準語に直してます

ババア:「なにをしてる?」

俺:「探し物」

ババア:「なんか無くしたのか?」

俺:「いや・・・・。この奥になんか祀ってあるとか聞いたことある?」

俺がそう言うと、ババアは急に怒鳴り出した。

ババア:「知らない!そんなの聞いたことない!」

俺:「はぁ?なんだよ急に。なんで怒ってんだよ」

ババア:「いいから帰れ!」

とこんな風に急にテンションMAXで怒り出したのだ。
こりゃ手がつけられんと思った俺は渋々村に戻った。

チッ、なんだってんだよ・・・・と家に戻ろうとしたら、友達の祖父が草刈りをしていた。
ちょうどいいや思った俺は爺さんにも聞いてみた。
そうしたら、なんとそれらしいのを知っていると言うのだ。

でかした爺さん!

場所を聞いた俺はさっそくそこへ向かった。

道中長かったので省略するが、こんなの教えられなきゃ絶対わかんねぇよ!ってところにあった。
日の光の入らない深い森の中の草を掻き分けながらしばらく進むと、足裏の感触が変わった。
土の柔らかい感触から、ゴツゴツと固い感触。
足元を確認すると階段のように石が積まれていた。
その苔むした石段を登った先に、それはあった。

説明が下手なんでうまく伝えられないけど、神社の境内みたいな感じでそこだけ綺麗に整備されてんのね。
めっちゃ山奥の、しかも獣道を進んだ先にそれだから相当ビビった。
そしてその中央には道祖神を祀ってるような小さな祠ってあるじゃん?そんな感じのが設置されてて、周りを同じ大きさの石碑で囲んでた。

石碑は六個くらいあったと思う。
祠は人の背丈くらいありそうな感じの大きさなんだけど、遠目から見てもボロボロで朽ち果てそうなくらい古いのが分かった。

その時・・・。
「ここはヤバイ・・・」、そう思った俺は踵を返して逃げた!

石段を全速力で駆け下りたせいで何度か転んだが、そんなことを気にする余裕が無かった。
あの祠の中からこちらを覗く顔と目が合ったからだ。
後ろから人の息遣いが聞こえる。
瞬きをすると、自分の後ろ姿が見えた。
何度も草木に足をとられたが、俺は全速力で走った。

半狂乱になり目からは涙がボロボロこぼれ落ちていたと思う。
目をつむる度に自分の姿が近付いてくる。

追いつかれる。

首筋に生温かい息を感じた。
もう目をつむっても、自分の姿は見えなかった。

気が付くと俺は家に居た。
今見たのを必死で記憶から消去しようと、布団の中でガタガタ震えていた。
俺はどうなってしまうのだろう。
洒落コワの話みたいに死んでしまうのか?
絶望を感じていたが、それから何事も無く今も普通に生きている。

この出来事を体験するまで洒落コワの地方伝説的な話を「ねーよwwww」と笑っていたけど、もう笑えない。
あそこはどう見ても人の手で整備されていた。

なぜ友達の祖父は俺にあそこの存在を教えたんだろう・・・。
聞きたくても去年の夏に死んでしまった。

あと友達の祖父に限らず、村でやたら自殺者が多いのは関係あるんだろうか。
村の人間は今まであそこの存在を隠していたのか、それとも知らなかったのか。
今となっては知る由もない。
知りたくもない。