N県S村に牛ヶ首という場所があります。
私の祖母がその近郷出身で、小学生の頃に、その祖母から聞いた牛ヶ首近辺であった話です。

祖母の曽祖母の弟にあたる人が、金貸しをやっていました。(江戸時代らしいです)
私にとっては、ご先祖さまなんですが、残念ながら名前はわかりませんので、仮に太郎さんとします。
太郎さんは、高利貸しであったらしく、あまり、評判は良くなかったようです。

ある夏の日、太郎さんは小僧さん一人をお供につれ、貸した金を取り立てるため山中の集落に出向きました。
集落の人たちに貸していたお金の取り立てがどのように行われたかは、はっきりは伝わっていません。
ただ、山の集落の人たちは酒席を用意しかなりお酒を勧めたそうです。
そして、太郎さんは、酔っ払ってお供の小僧さんと一緒に夜の山道を帰ったということです。

で結局、太郎さんと小僧さん、二人とも家に戻ることはありませんでした。
そのまま行方知れずとなりました。
山の集落の人たちに尋ねても、お金を返し酒を飲んで別れた後のことはわからないと、皆が答えたそうです。

残された家族は、山の集落の人たちではなく、ふもとの村人たちにお願いして、山の中を捜してもらいました。
そして帰り道とは逆方向の崖の下で太郎さんの遺体をようやく見つけることができたそうです。
遺体はすさまじい形相をしていました。

最終的には、夜の山道で酔っ払って落ちたんだろうとされましたが、帰るべき家とは逆方向にある崖から落ちたなんて妙な話だと、噂になったそうです。

さらに、取り立てた(山の集落の人々が払ったといってる)お金は、結局どこからも出てきませんでした。

また、お供の小僧さんがずっと見つからないのは、神隠しだとか、主人を殺して金を奪い逐電したんだとか、いろいろと噂になったそうです。

わたしは、この話を初めて聞いた小学生の時から、きっと小僧さんも山の集落の人たちに殺されたんだと思っています。

山の集落は、過疎のため昭和40年代中ごろに廃村となっています。