従兄弟の数年前の体験談。
幽霊関係無いけど。

当時、車の免許を取ったばっかりだった従兄弟。
何かトラブルを起こしたら怖いと会社と家の間の移動はしばらく徒歩と電車だったそう。
そんな従兄弟、ある日残業で夜遅くまで働いていた。

何とか電車に乗ることができ、電車を降りて駅を出てから家までひたすら歩く。
その家までの帰り道で従兄弟は何かが落ちているのを見つけた。
革でできた何かは恐らく財布かパスケース。
お人好しすぎる従兄弟はそれを交番に届けることに。
家に向かっていた足を方向転換させて逆の方向の交番へ向かった。

途中の自販機でオロナミンCを買ってチビチビ飲みながら歩いていると、前から人が歩いてくるのに気が付いた。

こんな時間におかしい!幽霊か!?
そう思って前から歩いてくる人を観察したが顔もある、手もある、足もある。普通の人。

だが、普通の人がこんな時間に暗い道を一人で歩くか?
そう思っていたら声をかけられた。

「お前だろ?お前だろ?お前だろ?お前だろ?お前だろ?お前だろ?」

こんなことをブツブツ呟いて近づいてくる。
ここで従兄弟は幽霊じゃないけど別の意味でヤバイ人と確信。
更にその人は刃物?鋭い物を取り出して「ニノニノニノニノ・・・」などとワケの分からないことを呟く。

ヤバイ、走らなきゃ・・・。
逃げなきゃ死ぬ・・・。

そう思っても足が動かない従兄弟。
相手は非情にも距離を詰めてくる。

1歩、1歩、また1歩・・・。

ここでとっさに従兄弟は飲みかけのオロナミンCを相手に投げつけた。
相手がひるんでる隙にすかさずダッシュ。
回り道をして交番へ駆け込んだ。
しばらくして冷静さを取り戻し個室で警察の人の事情聴取に答え、ついでに落とし物を渡した。

警察「これ、何ですか?」

従兄弟「あの、刃物を持った人に会う前に拾った物で・・・」

警察「財布?かなぁ・・・」

すると、その財布的な物から紙切れがハラリと落ちた。
慌てて拾い、それを確認する警察。
その紙切れはジャニーズの人気グループ、嵐のコンサートのチケットだった。

ここで警察、従兄弟共にある考えが浮かんだ。

警察「こういうチケットって、入手できたらすごい貴重ですよね。落としたら気が気じゃ無くなるだろうなぁ」

従兄弟「あの、これってあの刃物持った人の物かもしれませんよね?あそこで大人しく渡しても良かったかも・・・」

警察「いや、逃げて正解ですよ。そこで正直にそれを渡して、もしその人の物だったらあなたが疑われて何をされるか分からなかった」

そして警察がパトロールに行かせている者を現場に向かわせて、それから交番に来て従兄弟を家まで送ると提案した。

こうして、従兄弟は何事もなく警察に家まで送り届けられて終わった。

後日、やはりあのチケットは刃物人間のものと確信。
なぜなら、TVでやっていた嵐のステージの観客席に半狂乱の“あの”刃物人間がいたからだ。
それくらい、奴は目立っていたらしい。