家族で飲食店経営してた頃の話。

常連の芸能人の隠れ家的店ってことで紹介されて以来、本人さんとその連れてくるお友達目当てに、地元だけでなく遠くからもお客さんが来るようになった。
ここまでなら美味しい話なんだが、それ”ひっついてるモノ”もよく置いていかれるようになった。
俺は不運なことに、見聞き(霊感あり)が出来てしまう。

もっとも、100回遭遇してもはっきりとしたのは1回くらい。
大抵は姿はぼやけすぎでわからないし、はっきりと声が聞えることもない。
逆にそのほうが怖いので、はっきりとした姿が見えたり、「死にたい」とか囁いているのを聞いたりすると、逆に安心だった。

ある日、客が入ってきて、「いらっしゃーやせー」と営業スマイルしたんだが、視界に入れなきゃよかったと後悔した・・・。
客の体は、犬やら猫やらイタチやら猿やらの幽体が突き出してるような姿だった。
本人はなんともないみたいで、座敷席の衝立の向こうを覗きこんだり、一緒に来た男性と「ここって芸能人よくくるんだってー」みたいにして話してる。
けど突き出た動物の顔という顔は右に左に首をふるようなかんじで揺れて、目に入ったもの全部睨みつけてた。
「ヴォオオ」という感じの、声ともなんともいえないものがずっと聞こえてた。
二階からは、うちの犬が怯えきった声で「ひゃんひゃん」と鳴く声が響き続けた。

そのお客さんのお会計の時、隣の番地の住所が記載された名刺を渡してきて、「うちは躾(しつけ)もやってるんですよ。犬の鳴き癖噛み付き癖等あったらよろしくどうぞー」と言ってきたので、『いや、お前そのくっついてるやつ躾(しつ)けろよ』と言いたかった・・・。

ペットショップなんちゃらと書いてあったので、そいつに憑いてるモノの意味がわかった。

命を売り買いする商売ってのも業が深いものなんだなあと思って、以降ペットを買うっていうのも同じように思えて、うちの犬が死んだら二度とペット飼うものか、なんて思った。