ご飯のお友達、イカの塩辛、美味しいですよね。

私も大好きでこれさえあれば何杯でもご飯食べれました。
今回書かせていただいたのはこの塩辛に纏わる話です。
実際に地名を出すわけには行きませんが、私の聞いた怖い話を紹介します。
塩辛好きな方や長文苦手な方はスルーしてください。

とある地域ではイカの塩辛がかなりポピュラーで、その地域の村人なら誰でも作れてしまうほどでした。
塩辛は基本的にはイカを短冊切りしてイカの内蔵と塩で混ぜるだけの簡単な料理なのですが、味は千差万別。
作り手次第で全く別物になってしまいます。
そんな地域の中でもダントツに美味しい塩辛の作り手がいたそうです。
仮にこの方を黄村さんとします。

この黄村さんの作った塩辛は凄く濃厚で文字通り他の塩辛とはレベルが違うのです。
ちなみに村人が作った塩辛でも市販されている塩辛と比べ物にならない位美味といえば、いかに黄村さんの塩辛が美味しかったかがわかってもらえると思います。

当然評判を聞いた業者が「市販製品の監修してくれ!」とか、村長から「村起こしのために作り方を公表してくれ!」という依頼が殺到しました。
それでも絶対に黄村さんは首を縦にふることはなく、ひたすら村人の為だけに極少量のみ作っていた。
決して村人以外には食べさせなかったのです。

実は数年前まで黄村さんはいわゆる村の新入りで、家族そろって村八分のような扱いをうけていました。
その状況に耐え、同じ村八分の仲間内で助け合いながら、頑なに村人との接触を避けていました。

ただ数年前にとある事件で家族を失って以来、人が変わったように村人へ媚びへつらい、関わりだすようになった。
当然村八分にされていた人間ですし、最初は邪険にされていたようですが、美味しい塩辛で村人と良い関係を築いていったのです。

そんな理由から黄村さんの塩辛は村人と黄村さんを繋ぐ大事なキーであり、製法をばらしてしまうとまた村八分になる・・・と危惧して秘密にいるのだと皆が思っていました。
その根拠として、仲良くしていた他の村八分をうけていた新入りの家族とは表向きは仲良くしても、決して塩辛は食べさせなかったのです。

その後製法を頑なに秘密にする黄村さんを妬んだ村人がとうとう事件を起こしてしまいます。
黄村さんの家に覆面をして押し入り、包丁で脅して製法を吐かせようとしたのです。
結局最後には黄村さんは「製法を皆に伝授する、ただ不公平にならぬよう明日の夜皆を集める。貴方の正体に興味もないし、詮索しないから殺さないでくれ、頼むから帰ってくれ」と伝えました。

確かに黄村さんが死んだ後に別の人間が同じものを作れば犯人だと名乗るようなものですし、犯人もそれならば・・・と思ったのでしょう・・・そそくさと逃げていきました。

次の夜、黄村さんの塩辛の秘密を教えてもらえると聞いて村人全員とは言わずとも、たくさんの村人が集まった。
まず集まった村人にいつもの塩辛を振る舞い、楽しんでもらってから製法を公開することになった。

黄村さんは脂汗まみれでぶるぶる震えながらずっとぼそぼそ「嫌々・・・嫌々・・・」と呟き、体調がすごく悪いようでした。
ただ皆が塩辛を楽しんだのを見届けた黄村さんは汗まみれの蒼白な顔に薄笑いをうかべ手際よく塩辛を作り始めた。

イカの内蔵をぐちょりギちゅぐちゃりぐちゃりぐちょりと潰し、短冊切りにしたイカを混ぜ合わせていき、最後に灰色の白子のような物を入れ、更に、にちゃにちゃにちゅにちゃにちゃにちゅと、混ぜ合わせました。

それは至って普通の作り方でした。

「今のは白子か?」と村人が聞くと黄村さんは蒼白な顔で「それは脳です」と答えました。

村人はざわつきました・・・。

「お前らに苛め、むごたらしく殺された私の家族の脳です・・・」

実は村八分に堪えきれず娘と妻は数年前に自殺した事になっていたのですが、新入り仲間内では妻と子供は村人に偽装自殺させられていたと噂になっていました。

詳しい死の状況はとても聞けませんでしたが、妻だけでなく幼い娘にまで今でいうレイプされたような痕跡があったそうです。
ですがろくに調べもせず「自殺」と断定されてしまっていたのです。

お葬式は新入りの仲間内で行われ、遺体も正常な状態でした。
恐らく黄村さんは殺された家族の身体を傷付けぬよう、鼻から鉄の棒を差し入れ脳を引きずり出し、かきだし保存していたのでしょう。
その掻き出した脳を混ぜ込んだ特製の美味しい塩辛を村人に食べさせ続けていたのです。

そして最後に黄村さんは青白い顔で「お前らを呪う!・・・ぃぁぃ・・・ぁ・・・は・・・たぁ・・・ぃぁぃぁはあは・・・」と言いながらその場で笑いながら絶命しました。

絶命間際まで「嫌々?」とずっと呟いていたそうです。

その後、黄村さんの遺体を調べると腹に真新しい縫い傷があり、開くと肝臓がどこにもなかったそうです。
黄村さんの家には抜き出された肝臓(半分ほど)と、家族の遺体から掻き出したと思われる脳が少量保存されていました。

残り半分の肝臓は・・・恐らく・・・。

最後の言葉から迫害され殺害された家族の脳と自らの肝臓を村人に食べさせることで何らかの呪いをかけようとしていたと思われます。

結局、呪いがどうなったのかはわかりません。
ほとんどの村人は無事でしたが、その事件の後なぜかある家族と村長の息子がお腹が「いたいいたいイタイいたイタイいたいたいたいいたいイタイイタイいたい」とのたうち回りながら血を吐いて変死しました。

彼らの遺体を解剖すると、全員横隔膜から下の臓器が全て混ぜ合わせられていたかのように、ピンクと赤黒い肉をぐちゃぐちゃと混ぜ合わせどろどろになったようになっていたそうです。

それはまるで塩辛のようだったそうです。