今でも後悔してるんだけど、高校卒業して暇してた頃の話。

ある時友達のバカップルが、結婚するって言い出したんだよ。
まぁ絶対結婚しないとは思ってたけど、暇だからお祝いパーティーをすることにしたんだ。
海辺でBBQしながら、ウェディングベル鳴らして、花火する計画だったんだけど、ウェディングベルなんてどこにも売っていない。

そこでAがもう使われていない古い「火の見」に付いてる鐘を使うことを提案したんだ。

Aの言う火の見は、家の全くない荒れ地にポツンと建っていて、誰も近づかない様な場所にあった。
梯子は腐食していて、「危険のぼるな」っていう看板も辛うじて読める程度の物だった。

15m位の高さだったと思うけど、登るのは本当に怖かった。
そこにあった鐘は、1人では持てない程立派な鐘で、確か明治~年って書かれてあったと思う。
それを3人で運んで、近くの空き地で白と銀のスプレーで綺麗に色付けして、ウェディングベルにしたんだ。

完成したのは夕方で鐘を車に積んで、友達3人でご飯を食べに車で出かけた。

その時運転してたのは俺なんだけど、近くのカーブでハンドルをとられて壁に衝突・・・。
完全に足回りがやられて、即廃車になったんだけど、これが始まりだったんだ・・・。

その日は、車をぶつけたショックでブルーだったけど、とりあえず荷物をBの車に積み替えて、そのまま友達の家で寝たんだ。

次の日、車4台で海に出発したんだけど、10キロも走らないうちに、鐘をのせたBの車がCの車に追突して、そのままガードレールに衝突。
幸いフロント部分大破だけで怪我人はいなかった。

Bは、「ブレーキが効かなくなった」と、言い張ってた。

そこで計画は中止・・・。

Bは、なんとか車で帰ると言うので、荷物を移動して、Cと一緒に帰っていった。

残ったのは7人で、気まずい雰囲気もあったけど、俺も狙いの女の子がいた為ドライブすることになった。
俺は後席に座り、Dが運転手、鐘はトランクに入っていた。
良く走る山道、次のカーブがきついことを知っていた俺は、とっさに後席から「ブレーキ!!!」と叫んだ。

スピードメーターは70キロ。
いくら広い山道とはいえ、カーブの連続する道で出すスピードじゃない。
肩越しにDの足を見たが、確かにブレーキを踏んでいるようだったが、ブレーキが効いていないし、曲がりきれないと思った。

その時、トランクでゴトッと鐘の倒れる音がして、対向車線に黒のワゴンRが走ってきて、正面衝突。
相手の軽は横転して、Dの車も山に突き刺さった。

俺は幸い軽傷だったが、顔に穴があき、腕から骨が見えて血だらけ、悲惨な状態だったね。
1時間ほどして救急車で運ばれて行った。
翌朝、見舞いに来た親父が恐ろしい夢を見たとか言い出して、聞てもないのに話し出した。

それはカラフルな鐘に物凄い亡霊が付いていて、お坊さんが頑張って除霊しようとして、結局取り殺されるって夢だった。

俺は前日の事故の話も、鐘の話も一切していなかったから本当にびびって、Aと廃車置場に鐘を取りに行って、元の場所に返してきた。
その時に鐘を乗せたAの車は、その夏に川の氾濫でAの家ごと浸水して廃車になった。