中学生になると試験もあるから1人で勉強するスペースが必要だろうというはからいで、俺の1人部屋が与えられた。

霊感体質で相変わらずちょくちょく得体のしれない体験はしたが、実害はないので気にもならなかったし、
嫌な感じはなかったので普通に生活を送っていた。

俺一人であんなの見た、こんなの見たというと気のせいだったり、思春期にありがちな妄想的な線も否めないが、家族全員が家で起こる怪異を肌で感じるレベルだった。
階段付近の電球が新品にも関わらず点滅しはじめる。
そうすると、上からズッズッと誰もいない部屋から足音がする。

修学旅行で空けているはずの俺の部屋で明らかに人の気配がしていた事もあったそうだ。
もちろん家族それぞれ自分の部屋にいて、誰も俺の部屋には入ってないそうだ。
泥棒とかだと困るので部屋を開けて確かめたそうだが、部屋に異常はないとのこと。

ある時はコタツで眠り込んでしまった父が、真夜中に頬を撫でられて目を覚ました。
すると見覚えのない女性がコタツの上に寝そべるよう形で父親の顔を触っていたらしい。
目が合うとそのまま下の方へ(この場合父親の足元の方と言うべきか)するすると消えたと言ってた。

深夜、俺の部屋で母親が書き物をしていたら開いたドアの死角からシーツのような白い布をばさりと叩くのが見えた。
ちょうど洗濯物を干す時みたいに両腕で振るようなイメージだそうだ。
てっきり家族がイタズラをしたのだと思い、死角に行くが人はおろか白い布さえもないとのと。
そんなもんでうちではそういったことがあまり珍しい事ではなかった。

そんな家で金縛りに遭ったのが高校二年生の時。
夏休みも半ばに入った時期だと思う。
朝方ふと目が覚めると体が動かなかった・・・。
地面から巨大な掃除機みたいなもので吸われているような感覚だった。

初めて体験した金縛りに少し感動した。
身体の左側を下にし真っ直ぐと伸ばした状態で固まり、かろうじて目は動かせた。

薄っすらと日は登っていて景色がやや灰色のように感じ、時計を確認すると午前5時前後程だったかな。

しばらく金縛りの感覚に感心してたけどいつまでたっても動かない。
さて、どうしたものかなーなんて思ってると、頭上で「ずずず、、ずず、ずーっ」という音が聞こえる。

音から感じた印象はスープや飲み物を下品に音をたてて「ずずずずーっ」と啜るような音。
加えて表現すると一気に飲み干すというより、時間をかけてゆっくりゆっくり取り込むような感じ。

はて?、この音はなんだろうかと視界を上にやると部屋の天井あたりの隅っこにサッカーボール程の真っ黒な球体があった。

あのボールみたいのはなんだろうか?と思って見ていると、それが徐々に大きくなっているのが分かった。

それはある程度大きくなった時に気が付いたのだが、黒い物体が大きくなってるんではなく、実はサイズはそのままで俺の方に近づいているのだと。

さらに黒い球体は丸い物体ではなく、空間にポッカリと黒い穴が空いていたようだった。
部屋に小さなブラックホールが浮いている感じだと思う。

その穴から「ずずずー」と音が聞こえ、ゆっくりゆっくり頭の方へ近付いてくる。

直感的に「この穴に吸い込まれたら死ぬもしれない!」と思った。
しかし藻掻いても一向に身体は動かない・・・。

耳元で「ずずずーっ」という音に「クチャクチャ」という音まで聞こえてきた。
いよいよヤバイ!っと思ったその瞬間だった。

身体が横になっていた状態から垂直に立ち上がり、誰かに引っ張り上げてもらったような感じで手足の関節を曲げないまま真っ直ぐと起きた。

呆然と時計を見ると午前6時ほど。

立ち上がったと同時に身体は動き、黒い穴もなかった。
これといった後日談はないが、これが初めての金縛り体験だった。