あまり怖くない話かもしれないけど、自分の中では怖かった体験。
ありきたりだが、お盆3日間の出来事だった。

大学に入学、1人暮らし、初めての帰省がそのお盆3日を挟んで5日間だった。
帰省日当日まで、バイトをみっちり入れ、帰りのバスで爆睡。
実家にたどり着いた夜も疲れが抜けきらなく、やはり馬鹿みたいに寝まくった。

そして、お盆初日を迎えた・・・朝9時頃に起きた。
寝起きでぼーっとしながら、階段を下りていると、母と叔母の声が聞こえた。
階段を下りると真正面に台所へのドア、右手に玄関、左手にはトイレ・洗面所・脱衣所・風呂へと続く廊下がある。
母と叔母がドアの前で立ち話をしていた。
洗面所に向かおうと思っていたので、その立ち位置は通行妨害。
そんなとこで立ち話してないで、中に入ってすればいいのにと二人をぼーっと見ていると・・・母と叔母の脇を・・・左から右に何か白い影が駆け抜けていった。

明らかに人の形をした白い影だった。
しかも、背丈が母の腰ほどもない・・・。

素ならぎょっとするが、その時は自分は完全に寝起きで頭が回ってなく、考えるのも面倒で・・・さっさと忘れることに徹した。

夕飯は帰省の姉と里帰りの姉家族、私、弟、両親で食べた。
夜11時半頃に姉がバスに乗りそこね、両親が送って行くことに。
家には私と姉家族(姉、旦那、姪・2歳)、弟・6歳。

姉夫婦と話が盛り上がり、夜中の深夜2時頃に姉が「ローソンでお酒とおつまみかって来るわ」と旦那を連れて、私に姪の面倒を任せ、車で出かけた。

この時点で1階のリビングに姪が寝ており、2階の部屋では弟が爆睡。
深夜で、さっきまでのにぎやかな感じが一転し、家がシーンと静まりかえっていた。

幼い頃からお化け屋敷とか肝試しとか・・・とにかくホラー映画も見れないくらいそういうのが苦手で、高校2年あたりまで電気をつけてないと寝れないくらい、ビビりで怖がりだった。
静まりかえる家が無性に怖くなり、テレビをつけた。

丁度、『ドラゴンボールZ』がやっていた。(アニマックス)
悟空が元気玉作って、その最中、皆が時間稼ぎをしているところだった。
・・・怖かったのなんかすっかり忘れて、べジータの死闘に手に汗握った。
テレビの音量は姪っ子が寝ているので、小さい音で聞いていた。
エンディングが始まり、次はまだかなとウキウキしていたら・・・何か音が聞こえた・・・。

弟がトイレにでも行ってんのかな?と思ったが、でもあの子は寝てる間は絶対起きない・・・。
何か気になり・・・ついテレビの音を消音にしてしまった。
それがまずかった・・・・・・。

『タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ』

足音が家に響いていた。

この時、聞こえてくる足音が3階から2階にかけての階段あたりのものだとすぐにわかった。
小さい頃、姉たちの部屋が3階にありご飯を呼んだと時に、居間でよく聞く階段を駆け下りてくる感じそっくりだった。

ただこの時違っていたのは、音が『ダッ、ダッ、ダッ・・・』ではなく、『タッ、タッ、タッ・・・』という軽快な足音だった事だ。

実家にいた頃、弟がよく階段を走り回っていた子供の軽快な足音。
まんまその音が家中に響き渡っていた・・・。

階段を下っては上り、下っては上り、それに聞き入って耳を澄ましていて、ハッと我に返り、血の気がサッと引き、鳥肌が立った。

テレビの消音を取りやめ、音量をガツガツ上げまくり、亀仙人のくだりを必死に聞きいった。
この時だけ、これほど亀仙人の長ったらしいくだりが嬉しかった事はなかった。

しばらくすると、姉夫婦が帰ってきた。
その夜は、怖くて自分の部屋に戻れなく、1階の居間で姉と一緒に寝させてもらった。

お盆2日目の朝。
頭の中でそういえば初日に見たあの白い影と夜中の足音がイコールしている気がしてならなく、頭の中はそれでグルグルしていた。
よく考えたらお盆だから、家にご先祖様の誰かが帰ってきてるのかもと思い直し、怖くない怖くないと、自身に言い聞かせた。
だけど、やっぱ怖がりの身としては、身内だろうが怖いもんは怖かった。

その日の夕飯、それとなしに父(長男)に聞いてみた。

「うちの家系で4、5歳の子が亡くなった事ってある?」

この時、何故か自分はその白い影、もしくは階段を駆けていたのが、4、5歳の子だという気がした。
背丈が小柄な6歳の弟よりも低かったなー・・・と思ったからだった。

父は「知っている限りではそんな幼くして亡くなった子供は家系にはいない」と言ったが、「もしかしたら自分が知らないだけで、昔はいたかもしれん」と言われた。

いきなりそんな事を聞いてくる娘に特に何てことなく、さらっと会話が終了。

お盆だし、もしかしたらご先祖様の誰か・・・もしくは全くの知らない誰か・・・・・・。
つい知らない誰かの方だったら嫌だなとか、マイナス思考になり、やっぱりビビッていた。

だいたいそういうの(霊感)ないし、遭遇した事がないの。
だけどもしかしたら世の中、科学とかで解明できない事ってあるから、そういう幽霊とか類のものがいるのかなと?

そして自分は、お盆だし誰だってちょっとぐらいは何か感じる事ぐらいはできるのかと思った。
それに、そんな事頻繁に起こるわけないないと、その日の夜は完璧に楽観しまくっていた。

その日の夜、お風呂から上がり、洗面所で洗顔やら化粧水やら肌ケアをしていると・・・何か視線を感じた。
洗面所から続く廊下には戸はなく、暖簾(のれん)がかかっているだけ。
その暖簾は長くなく、自分の立ち位置から上半分は暖簾で視界がさえぎられ、下半分は廊下の床が見えていた。
視線は気のせいかと思い、鏡の方へ向き直ろうと思った時・・・キシッ・・・っと廊下の床が撓む音がした。

築14年だし、そろそろ撓む事もあるだろうと、なるべく考えないようにした。
だけど、続けて『キシッ、キシッ、キシッ・・・』と何かがこちらに踏み寄って来る音が聞こえた。

この時、「暖簾の向こう側に何かいる・・・」と思った。

暖簾越しに視線を感じて、風呂上りで暑いなと思っていたのが嘘のようにサーっと血の気が失せていくのがわかった。
何かヤバイと思い、居間にいる姉に向かって「お姉ちゃん」と呼びまくったが、姉は来てくれなかった・・・。

膝がガクブルしてきたので、「お姉ちゃんっ!!ちょっ、さっさと来い!!」と、ついキレ気味で大声を張り上げてしまった。

姉がようやく何事かと洗面所にやってきて、「どうしたー?顔、真っ青だけど」と言われた。
鏡を見ると、風呂上りにもかかわらず、本当に真っ青で鳥肌が立ちまくり本当にやばかった。

とにかく、姉に今までの経緯を話すと姉も真っ青になり、とにかく二人の間で「今はお盆だし、ソレはご先祖様の誰かって事にし、だから怖いもんじゃないよねと。何か危害を加えられたって訳じゃないしね・・・。悪いもんじゃないよ・・・」と、そういう結果に落ち着いた。
その後、やはり部屋に上がるのが怖く、姉のお布団で寝させてもらった。

3日目は特に何も起こらなかった。
とにかくお盆のこの出来事は怖がりの自分にとってはひたすら怖い3日間だった。
大して怖くなくってゴメン。