数年前、水道管の水漏れ修理の仕事をしてた。
普通水漏れってのは家の中で起きて、スグ気づくものだ、これは修理もやりやすい。

厄介なのが床下で漏れててしばらく気づかなかった物件・・・。
床下に水溜りができて、そこには特殊な生態系が・・・。

「カマドウマ」って知ってる?

毛の生えた気色悪いバッタみたいなヤツ。
アレは水に集まる性質があり、雨の少ないときだったりすると、実に広範囲から大量に結集しやがる。

床下点検口を開けるとヤツらが平方メートル辺り50匹は下らない勢いで蠢いている。
人様の敷地に床下帝国を築いてイイ気になっているのだ。
帝国には他に蜘蛛やゲジなど人気ワースト生物が軒並み揃うが、カマドゥに比べれば脇役だ、数が違う。
ゴキに至っては懐かしい地上の面影、どちらかと言うと味方側の存在だ。

床下に降りると、ヤツらは驚いて一斉にジャンプする、高さ1m以上。
これがイケナイ・・・。
驚きの対象から逃げようとすればいいのに、適当に跳ぶもんだからこっちに向かって来るアホカマドゥが居る。
なんかもう歓迎の踊りっぽいのだ、不思議の国に誘うウサギ気分なのだ。

顔近くに取り付くのもいるが、この時、手で払ってはいけない。
潰れて汁を出すから。
放置しかできない、心に深い傷を負うかもしれないが、体に臭い汁を負うよりはマシだ。

以前コウモリだかネズミの死骸をカマドゥが群れ成して食ってたのを見たが、人間が床下に埋められたとしたら凄まじい光景になろう。
俺は怖がりだが、床下で後ろに幽霊がいたとしても、怖がっている余裕がないだろう。
ココに居れることに敬意は感じる。
雇いたい。

一度家主が帝国の繁栄を見かねて、俺にバルサンを渡してきたことがあった。
気色悪い思いをした俺はニヤリとして床下にそれを置いた。
後日、煙から逃れようとするカマドゥが床上に侵攻、略奪陵辱の限りを尽くされたと家主が語った。