先日、家の近所のゴミ捨て場に大きなぬいぐるみが捨ててあった。
朝、出かける時に目に止まったんだけど、不思議なのは夕方に帰ってきた時にも同じ場所にあったこと。

なんで回収されないんだろう?と思って、近づいてみると顔にお札みたいなのが張られてた。

「もしや呪いの人形?」とか思ったんだけど、ただ単に「これは粗大ゴミなので区に連絡しなさい」みたいに書いてあっただけ。
普通のゴミとして扱うには大きすぎるから、手続きが必要だったみたい。
そのぬいぐるみは巨大だったし、座っても1m以上あった。
白いクマだったから幅も結構あったね。

数日後、同じ道を通るとまだ“そいつ”がいた。
どうやら持ち主は手続きが必要なことを知らないのか、あるいは無視するつもりだったらしい。
毎日通る道じゃなかったけど、通るたびにまだそいつがいるのを確認するのが習慣みたいになってたんだ。

ところがある時、奇妙なことに気がついた。
そいつの場所が微妙にずれていた。
最初は気のせいだと思ったんだけど、通るたびに少しずつ場所が変わっている。
それも同じ方向に向かって。

風で動くようなシロモノじゃないし、子供がいたずらでもしたんだろう?と思って近寄ってみた。
ちょっと前に降り続いた雨に打たれたそいつは灰色になっていたし、目も取れかかっていて不気味だったけどね。
その時に初めて知ったんだけどさ、ぬいぐるみって水を吸うんだね。
芯まで吸水したような巨体は重いし、何よりもつかむとじゅわっと水が出てくるのが気持ち悪くてすぐ手を離してしまった。

で、“そのぬいぐるみは今でも動き続けている”・・・っていう話なら紛れもないホラーなんだけど、オチはちょっと違う。

確かにそれからしばらく位置を変えてどこかに行こうとしていたみたいなんだけど、ある時通りがかると、車道でトラックにでも轢かれていたのか頭の部分がなくなっていた。
そしてそれ以来、動かなくなってしまったみたいなんだ。

動いていたらどこに行くつもりだったんだろうね。