高校生のAは住宅街の街に住む普通の17歳だ。
Aは家から自転車で20分程度のところにある高校へ通っていた。
東京のベッドタウンになっているAの住む場所は団地が多く立てられている。
Aは毎日団地の前を通って登校していた。

いつもの通学路を自転車に乗って登校していると団地が見えてきた。
団地の前には幼い子供連れのお母さんが何人かいた。
子供が飛び出したら危ないと思い、Aは自転車の速度を緩めながら団地の前を進んでいった。
親子連れとすれ違う瞬間、Aは1人の子供が団地を指さしているのに気づいた。
しかし、その親や他の子供はまったく気づかない様子だった。

Aはなんとなく不思議に思って子供が指差す先を見た。
そこにはマンションの1室があり窓が開いていて、窓のすぐそばには少女が立っていたのだが、そのときAは特に違和感を覚える事もなくその場所を過ぎ去った。
その日の夜、バイトを終えたAが同じ場所を通ったときだった。

あの部屋の窓が空いている・・・。

Aは目を凝らした。
そこには朝と同じと思われる少女が見えた。
月明かりに照らされた彼女の顔はとても美しく、Aは一瞬、呼吸をするのを忘れてしまうほどだった。

朝よりも薄暗いはずなのに不思議と朝より少女の顔はよく見えた。
透き通るほど白い肌、Aより2つくらいは年下かと思えるまだあどけなさの残る顔立ちをしている。

Aは彼女に恋をしてしまったようだった。

しかし、少女は夜空の星に夢中なのだろうか、Aが自分を見ていることには気がつかない。
都会から80キロほど離れたその街から見える星空はとてもキレイだった。

それから毎日、Aは団地の前を通る。
その度に部屋の窓は開いていて、少女は窓の外を見ている。
Aは団地を通り過ぎるほんの一瞬だが、その部屋の少女を見て「おはよう」と心でつぶやいていた。
Aはその少女の事が気になり、話してみたいと思うようになったが彼女はAには決して気づいてくれない。

でも、おかしいぞ?
Aは思った。

毎朝・晩と彼女は部屋から外を眺めているが、学校には行っていないのだろうか?
働いている感じもしないし、、、しかもどことなく悲しげな表情だ。

病気なのかもしれない・・・。

Aはそう結論づけた。
精神的なものか肉体的なものかはわからないが、彼女は何かの病を抱えている。
だから部屋から一切外に出ないで部屋から外を眺めている事しかできないのだろう。
彼女とせめて話ができたら・・・。
その日の夜も団地の前を通ると少女は昨日と同じように、ぼんやり星を眺めていた。

Aが少女の部屋の前で顔を上げると少女がAの存在に気づいたのか、一瞬微笑んだ。
その直後に彼女の口元はかすかに動く、Aはそれを見逃していなかった。

何か、、言いたいのかもしれないけど、聞こえないよ。

「・・・どうしたの!?」

Aは少女に向かって声を張った。
Aに向かって白い歯を見せて微笑んだ彼女の顔はAがいままで見た女性の中で最も美しく、自分と同じ世界にいないような神秘性を感じた。
次の瞬間、Aは自転車を放り出して、マンションの階段を駆け上がり、女の子の部屋の前まで行くと呼び鈴ボタンに手を伸ばした。

でも家族が出たらどうしよう・・・。

そんな考えが脳裏に浮かび、Aはそのまま引き返したが、自転車まで戻って彼女の部屋を見ると彼女はもうそこにはいなかった。

次の日の朝、彼女の住む団地の前を通るとそこに星を見ていた少女はいなかった。
というより窓が閉まっていて、『KEEPOUT』という黄色い帯が貼られ、いつもはいないはずの警官が住人たちと会話していた。

「実は405号室に一人で住んでた女の子がね、、首をつって自殺してたみたいなの、誰も気づかなくってね、、何か悩んでいたのかしら。。。」

少女は窓から星を見ていたのではなかったし、病気でもなかった。
Aが見ていたのは首を吊って亡くなった少女の亡骸を下から眺めていただけだったのだ。