目一杯実話やけど、もう随分前のことやし、いいかな。

小学校からの友達で『よしお君』てのがいた。
明るくてクラスの中心人物て感じ。
そいつ中3の12月に自転車で30分ほどの川に釣りに行って、足滑らせて川に落ちて死んだんだ。

そいつが死んだのは日曜日なんやけど、俺たまたまその日家族で外出して夜11時くらいに学校の前を通ると職員室に電気が点いてて、それを見ながら親となんで日曜日のこんな時間に人がいるんやろう??と話したことをよく覚えてる。

後から考えたらちょうど遺体が上がって学校に連絡が行って先生方が集まってた時間だった。

それから3ヶ月後。
卒業式の日を迎えて、式が終わって教室で最後のときもやっぱりみんなどことなく素直にワイワイ言えない雰囲気なんよ。

先生なんか特に涙ぐんでる。
その涙は卒業の感動じゃないってことくらいみんな分かってたんよ。
1人死んでるわけだからね。

でもね、その後教室で卒業アルバムを見て恐怖と悲しみでクラス中泣くことになった。

まず卒業アルバムのクラス写真は1人1人の個人写真じゃなくてクラスでの集合写真なんよね。
みんな笑顔で正面向いて目をつむったり、正面見ずによそ見してる奴が1人や2人はいるもんで、そうなると翌週に撮り直しになるんだ。

やっぱり数クラスは撮り直ししてた。
2回撮り直ししたクラスもあったね。

で、そのアルバム用の写真撮影は9月に行われてて、当然12月に亡くなったよしお君も参加してるわけ。
出来上がったアルバムのクラス写真さ、よしお君、完全に下うつむいてるの。
それもなんとも言えないすごい寂しそうな顔でね。

しかもクラスの最上段右端に写ってるんやけど、なぜか少しみんなから離れて立ってるの。
みんながだいたい肩が触れるか触れないかの距離で固まってるのに、1人だけ隣と50cmは離れてる。
ありえない写真。

卒業後に全然事情を知らない奴2人にアルバム見せたら2人とも「こいつだけ合成?」って言ったくらい。