俺、四国の凄い田舎に住んでてた。
子供の頃から知り合いの漁師さんから聞いた話。

たまにその漁師さんと沖に伝馬船(てんません)出してもらって釣りに行く。

いつものように竿を出してると、その人が「お前足どしたん?」と。
見てみると丸く赤く腫れてる・・・。
どこで出来た傷なのかまるで見当もつかない・・・。

すると、漁師さんの顔が急に真剣になり、「お前、誰ぞに恨まれるようなことしてないか?」と。

全く身に覚えがないことを伝えると、「それ犬神かもしれんけん、とりあえず原因解るまで船には乗せれん」と。
結局、釣りは中止、急いで病院に行くことになった。

・・・んで見てもらった結果、桜の花粉かなんかに負けてるって言われた。

それから犬神発言が気になってしょうがなくて、その漁師さんの家で色々と聞いてみた。

仮にその漁師さんをAさんとします。
ちなみに年齢は70代後半かな。

Aさんがまだ若い時、その漁師町には犬神憑きと呼ばれる家族が少なくとも4つ以上あったらしい。
その犬神憑きの人達は見た目から違ってて、一目見るだけで判る風貌をしてたそうです。

漁村の人はなにか困ることがあると、と言うより嫉妬、恨みの願いごとがあればその家に行き、作物、魚等を持って行き、対象の人物の名前を言うだけで“色々”とやってくれるそうです。
その後、その対象の人物の体の一部に犬に噛みつかれたような痣が付き不幸が訪れる、と。

お払いを受けた後、傷は消えて漁も普通に出来るようになったそうです。

しばらく経ったある日、犬神憑きの家の人が尋ねてきて、「お前の肩に犬神を付けたのは◯◯だ」と言いに来たそうです。

その時「その相手に犬神を憑けてやろうか?」と持ちかけられたそうです。

Aさんは犬神憑きの人間と付き合いがあると隣人に知られるのが嫌で、丁重にお断りして帰ってもらったそうです。

一応、俺が聞いた話は以上です。