『ぼっけえ、きょうてえ』って小説知ってる?

岡山の貧村に生まれた女郎が客に自分の身の上を聞かせる話。
それ読んでた母親がなんかいきなり変な顔になってさぁ・・・。

母親はやっぱり岡山出身なんだけど、子どもの頃はその小説の主人公にも負けないくらいの酷いー暮らししてて、親子六人で六畳一間くらいの部屋に居候してたらしい。

隣は牛小屋で時折牛が鳴いたり、部屋の壁を牛がゴツゴツする音が聞こえたそうな。
居候先は親戚の家で母親と同い年ぐらいの知恵遅れの女の子がおり、なぜかその子は「牛から産まれた子」ということになっていた。
母親も小さい頃はその子と遊んでいたが、小学校に上がってからはほとんど遊ばなくなった。

ある夜、母親はうめき声のような音に目を覚ました。
うめき声は隣の牛小屋から聞こえてきた。

牛が鳴いてるのかな、と思って覗いてみると・・・例の知恵遅れの子が、牛の股に顔突っ込んで「おおおお」ってうめいてたそうだ。

そこでいきなり父親(俺から見ると祖父ね)に腕をつかまれ、怖い顔で「もう寝ろ」と布団に戻らされたらしい。
うめき声は母親が寝入るまでずっと聞こえてたそうな・・・。

結局、母親の一家はその後街に出ることになり、母親もすぐにそのことは忘れたが、本を読んで数十年ぶりに思い出したとのこと。

「父ちゃんは何か事情知ってたのかもしれないけどね、もう死んじゃったし」と、そんなことを言っていた。

母親の語り口があまりにそっけなくて逆に不気味だったので、書いてみた。