団体仲間の話。

休日に友人と二人、近場の山へ出掛けた。
子供や老人でも登れる小さな山だが、それでも頂上に着く頃には結構疲れた。
頂上の一方は展望台になっており、望遠鏡が備え付けられている。
天気も良かったので、眺望(ちょうぼう)を楽しもうと覗き込んでみた。

すると、いきなり口を一杯に開けた女の顔が見えた。
傷なのか血なのか、髪の先から顎に掛けて、赤い筋が何本も走っている。

ビックリして尻餅を付くと、友人が「どうした?」と助け起こしてくれた。
今見たものを説明すると、友人は恐る恐る望遠鏡の前にしゃがみ込んだ。

「変なものは何も見えないぞ」

促されて再度見てみたが、確かに普通に良い眺めが広がるばかり。
もう何処にも、あの女の顔は見えなかった。

何だったんだと首を傾げながら展望台を後にする。
その時、背後から「ひゃぁ!?」と叫び声が聞こえた。
振り向くとリュック姿の小母さんが、ペッタリとへたり込んでいる。

「・・・多分、僕と同じものを見ちゃったんだろうなぁ」

そんなことを考えながら、下山したのだという。