これは3年くらい前、実家で体験した話です。

実家には子供部屋が1つあって、そこが20畳位あるんです。
小さい頃は兄弟で使っていたのですが、進学のため親元を離れるようになってからは、兄の独占状態でした。
そのため、俺が実家に帰ると、決まって仏間に布団を敷いて寝るようにしていたんです。
実家に帰るのは正月かお盆かって位だったんですけど、これは正月に帰った時に体験したものです。

疲れていたこともあり、親に早めに布団を敷いてもらい、11時には床についたのですが、夜中の3時位にふと物音に気付き目が覚めました。
その音と言うのが、知っている方が居るかどうか解りませんが、ガラスの玩具が転がっているような音でした。

簡単に説明すると、鉛筆状の中が空洞のガラスの管に、細かなガラスの屑が入っているものです。
ガラスの屑は色形共に様々で、転がすとキレイな音がします。
俺はこの玩具を見たことがあったためそう思ったんでしょうが、実際に物を確認する事無しに、その玩具だと言う確信が有りました。

ガラスの玩具の音に慣れてきた頃に、違う音が聞こえてきました。
それは居間の方からでした。
家の仏間は、居間と襖1枚隔てているだけの所にありました。
それは、なにか数え歌のようなもの。
小さい女の子の声でした。

「ひと~つ・・・」

「ふた~つ・・・」と・・・。

よくよく聞いて見ると、歌っているのは二人で、居間をぐるぐると廻っているようでした。
居間には大きなテレビがあるので、その時点では、テレビの音だろうと思っていたのですが・・・その声が居間と、仏間を隔てる襖の前で止まった時、普通じゃ無いと解りました。
数え歌の七つ目位からは襖のすぐ向こうから聞こえており、歌が終わると明らかに部屋内から「ズズズッ・・・」「ズズズッ・・・」と、なにか引きずるような音と共に、2人が部屋に入って来たのが解りました。
もちろん襖が開いた音なんてしてませんでした。

気付けば金縛りです・・・。
一向に動くことが出来ません。
・・・“それ”が部屋に入ってこられてから確信しました。

2人のお人形さんのような女の子・・・。

まったく同じ顔に、同じ髪型に、微妙に違った柄の羽織。
部屋は真っ暗で、起きてから目は一度も開けてませんでしたが、なぜか確信が有り、決して見てはいけ無いもののような気がしました。

2人が探しているものは明らかです。
ガラスの玩具です。
それが自分の頭のすぐ上にあることを思い出した時、恐怖しました。
嫌でもこっちに2人が来るのが解ったので、全神経を使ってなんとか動こうと試みましたが、ピクリともしません。
そんな俺をじらすように女の子達は、少しずつ近づいて来ます。
そしてとうとう見つけました・・・。

二人は女の子じゃなかったようです。
なにかくぐもった声で「アッタネ・・・」「ウン、アッタ・・・」と言い合ってます。
それでも、これで居なくなってくれるだろう・・・と思ってじっと耐えていたのですが、2人はクスクスと笑いあって、動く気配がありません。

しばらくすると、その不快な笑い声が顔の方に近づいて来ました。
本当に目と鼻の先に・・・。
こうなったら意地でも目を開けまいと踏ん張っていたのですが・・・今まで聞いたことのないような大きな声が部屋に響きました

「ハ・イ・ッ・テ・モ・イ・イ?」

びっくりして目が開いてしまいました。
その時目の前にあったものは、想像した通りの、お人形のような2人の女の子・・・。
2人の死んだような黒い瞳が、そこにありました・・・。
瞬間俺もすごい勢いで、私は叫んでいたようです。

それからは、錯乱していたようで記憶があまり無いのですが、両親が声に気付いて2階から降りて来たようで、気付いたら父が目の前に居また・・・。

「なにがあったんだ!!?」と、しきりに聞いて来ましたが、23歳にもなって幽霊見たとは言えず・・・。
その場は「夢を見た」と言うことでお茶を濁したのですが、両親は納得してはいないようでした。

次の日の朝、母が俺にしきりに聞いてきました。

母「◯◯、あん時、ほんとにあんた1人だったの?母さん、確かに聞こえたのよ。あんたの声といっしょに女の子のすごい笑い声・・・。女の子を連れ込んでたの?」

母がどう理解したのかはさておき・・・やっぱり部屋に女の子が居たのは夢ではなかったようです。