※このお話には【幽霊知ってる女だった(後編)】があります。

昔、10代の時で悪い事の分別もつかない時の話。
中学を出て、高校も行かず、仕事もせずにツレとブラブラ遊び回ってた。

いつものようにツレから連絡があり、今から肝試しに行こうとなった。
俺は昔からそういった事は全く信じておらず、怖い物など無いと言ってのけていた。
二つ返事で了解し、ツレが迎えに来て、さっそく肝試しに向かう事になった。
場所は割と近い山の中のトンネルだった。

メンバーは血の気が多くリーダーシップのあるTと、10代と言うのにすでに威厳のあるM、多少幽霊関係にビビり気味の超絶イケメンSの4人で行く事になった。
皆、霊感何て物は無くS以外は幽霊何ていないと余裕で心霊スポットに向かっていた。
今考えたら、これが間違いだった。

その山までは1時間もかからずに着いた。
道中は何も無かったが、山中の丁度カーブ辺りに花が供えてあったのを見て背筋に悪寒が走り、何か忘れてると考えたのを覚えている。

無事にトンネル前の駐車場に着き、トンネルには直接入れない為、駐車場に止めてそこから四人で歩いて行った。
幽霊など信じてはいなかったが、やはり夜中の山道は気味が悪く嫌な位静かだった。
そんな中、無理に盛り上げようと、Tが崖落ち防止のガードレールを蹴り上げながら声を張り上げていた。

T:「全然大した事無いやろ、暗いだけ」

俺:「本当だね、全然大した事無いし、拍子抜けだ」

S:「いやいや、充分怖いし、もう帰りたい」

そんなたわいない会話をしながら歩くと、すぐに目的のトンネル前に着いた。

息巻いて来たはいいが、トンネルの入口の時点で圧倒される程に嫌な雰囲気だった。
トンネルはまるで侵入者を拒むように、もしくは中にいる者を出さないように、デカイブロックで封鎖されていた。
流石に誰が行くと、雰囲気にもなれずにタジタジでいると、血の気の多いTが言い出した。

T:「お前らビビってる?情けないね、俺が行くわ」

ここで行かなかったらビビり確定、それだけは避けたかった俺は、思ってもない事を言ってしまった。

俺:「ビビるはずないだろ、俺が一人で行って来るから待っとけ」

本当に後悔した。

T:「お前は男だな、ヨシ行け」

この時ばかりはTを恨んだ。
本当に零感の俺でもヤバイ雰囲気ムンムンだったから。
しかし、一回言った事なので後には引けず、ブロックの隙間から一人、吹き抜ける暗闇に侵入した。

いざ入ってたはみたものの、中はずっと続く暗闇、その日暮らしの俺達は懐中電灯など無く、あったのはジッポライターの明かりだけ。
その明かりが余計に揺らめいて見え、不気味さを更に強調していた。
トンネル内は天井から水滴が垂れる音以外の音は無く、幽霊なんていないと考える俺でも、奥に向かって中々踏み出す事も出来ずにたじろいでいた時、トンネル外で待つツレが叫んで来た。

T:「中はどうだー?」

S:「マジでやめた方がいいってー」

M:「俺らも行こうかー?」

その声で少し恐怖が消えた俺は、「大丈夫、奥まで行ってみるわ」と、トンネルの奥に向かい歩き始めた。
いざ歩き始めると恐怖心は余り無く、むしろ何故か懐かしい感覚にさえなったのを覚えている。

そんな違和感を抱えながら、丁度トンネルの半分位に来た時、カーブの時に忘れてた事、妙な懐かしさの正体が何なのかはわかった。(これは話に繋がる事なので、詳しい事は後で話す事になります)

怖さは完全に消えそのまま奥に辿り着き、何も無く溜息混じりに戻るかと踵を返した時に・・・それは起こった。

耳元からフゥーっと息を吹きかけるような生温い風が耳にかかる。
気のせいと気にせず歩を進めるが、10秒おき位にずっと吹きかけられ、流石に恐怖心が蘇った俺は、足早にトンネル入口へ向かった。

足早になった辺りから吹きかけられている息が絶えず吹きかけられようになり、恐怖心が絶頂に達した俺は、全力で入口に向かって猛ダッシュした。

何とか入口のブロックの隙間からはい出て、耳元の息も無くなり一段落した俺は、固まって待っていたツレの所に行こうとした。

俺:「スゲーよ、ここは本気でヤバイ、マジで焦ったし、何か耳元で息を・・・」と俺が言いかけた時に、

ツレ達が顔面蒼白で震える声で言った。

T:「お前の後ろ、何なんだよ」

M:「お前悪ふざけも大概にしろよ、そんなんで出て来たら洒落にならんぞ」

俺は「はぁ?」となりましたが、ああコイツら出てきた俺をビビらす為のドッキリだなと思い、少しキツめに「お前らが大概しろって、一人でマジ怖い思いしたんだぞ」と言ったと同時にSの様子に気付いてしまいました。

Sが涙目になりながら震えていた・・・。

幽霊にはビビるが普段は肝の座ってたコイツが、演技で涙目になり震えるはずがないと思った俺は、何かが確実に後ろにいると思い動けなくなった。
恐怖に直立不動で動けなくなった俺は、ずっとツレに視線を向けていたが、ある事に気付いた。

左眼の視線の端に、黒い髪のような物が見える。

しかし、恐怖心が勝り確認出来ずにいた時に、急にSが「マジもう無理だ」と言いながら駐車場に向かい走り始めた。
それと同時位にTとMも「マジスマン」と言いながら走り出した。
恐怖心はヤバかったが、パニックになりながらも、この状態で一人残される事な方が無理と判断した。
俺も駐車場に向かい全力で走り出した。

本当にビビり上がっていた俺は、何度も躓きながらも全力で走ってた。
子供の頃に聞いた”幽霊は光が嫌い”・・・そんな迷信めいた事を考え、駐車場に着き車のライトさえあれば大丈夫だと、藁にもすがる気持ちで走り続けていた。

走り続けていた時になって初めて気がついたが、ずっと背後に気配がしていた事に、さっきは安堵からかツレばかりに集中して気付かなかった事に気付いてしまった。

この時に後ろにいる何かをもし連れて行ったら車に乗れないかもと考えた俺は、確認しないといけないと思った。
本当に気が動転していたんだと思う。
現在の恐怖心より、置いて行かれる恐怖心が勝ってたから。

俺は立ち止まり、意を決して後ろを勢いよく振り向いた。
少しでも怖さがないように自分なりに考えてした事だが、これが本当に失敗だった。

・・・目を見開いた女が俺を凝視していた。

俺はいつも洒落怖を見て『本当の恐怖にあったら~』を見て、いつも本当には違うなとか考える。
まぁこれは俺だけかもしれないが、余りの恐怖と驚き等混ざりあった結果なのか、失禁と脱糞を同時にしてしまった。
女は普段よく書かれる貞子の用な風貌ではなく、前髪を上げて、普通にフリルの着いた上着、ジーンズという出で立ちだった。
普通なら本当の人間だと思う位普通だった。
だが決定的に違った目、鼻、口。全てが生きている人間とは違った。

口は所々裂け化膿しているみたいにグチュグチュになっていた。
鼻は右の鼻孔から半分以上ちぎれかけている。
決定的なのは目だった。

黒目の部分と思う部分には、無数の光るガラスみたいな物が突き刺さり、涙のように黒い液体が目から滴り落ちていた。

気がつけば俺は何も考えず一心不乱に走り出していた!

糞尿を裾から垂らしながら、涙はこぼれ、鼻水を垂らしながら、本当に人間として最低辺だと思う姿だったと思う。
でも俺が考えれる事は、死にたくない、助けて、ごめんなさい、を繰り返すしかなかった。

走っている間、またあの息を吹きかけられているような音が耳元から聞こえた。
それがまた恐怖心を増長させ、何度も転びながらも駐車場に辿り着く事が出来た。

ツレ達は車で待っていた。
エンジンをつけライトをつけていた為か、俺は助かったと思いながらも全力で車まで走った。
俺が車に近づくにつれ、気配は遠くなっていった。
後ろに乗ってたTがドアを開けて待っていたので、飛び込むように車に乗り込み、そのままタイヤを唸らせながら、全速力で山道を下っていた。
俺は震えと恐怖が止まず、窓からキョロキョロ女がいないか確認していると、横にいるTが話しかけてきた。

T:「お前大丈夫だったか?本当に悪かったな、本気であれはヤバ過ぎだったから」

M:「本当にスマンな・・・」

S:「マジ申し訳ない、我慢したかったけどあれは無理だった」

どうも、最初は俺が逆にドッキリを仕掛けていたと思ってたらしい。
あんなの無理だと普通にわかると思うが・・・。

俺:「マジ人生終わったと思ったぞ、お前達マジ薄情だと思ったし・・・まっ俺が逆でも本当に怖いだろうし、気持ちはわかるしいいよ」

山を下っているからか安心感が出て、落ち着いてきた俺はツレ達を許し何気無しに窓から外を見た時に気付いてしまった。

丁度花が供えてあるカーブに差し掛かる時に、木の上いる何かに・・・。

またパニックになりかけた俺は、「早く、早く、飛ばせ」と声を荒げながら何度も叫び、何故か隠れるように座席の足元に座りこんだ。

S:「何だよ、本当やめろよ、マジ勘弁してくれよ」

M:「何があったんだよ、またいたのか?」

車内はパニックになりかけた時に、Tが聞きとり辛い程の小さな声で言った。

T:「俺も何か見たぞ・・・木の上に何かいた」

その言葉で車内は完全にパニック状態になり、捕まってもいいと100キロ以上を出し逃げるように帰った。

皆、家で一人になるのを嫌がり、俺も嫌だったので、4人でTの家で泊まるようにした。
Tの家をいつも溜まり場にしてたし、いつもの流れでもあるが・・・でもその行為は意味が無く、それはその夜に起こった。

無事にTの家に着いたものの皆寝れずにいて、恐怖心を少しでも払おうと酒盛りを始めた。
俺はパンツが汚れていた為、風呂を借りてから酒盛りに参加。
風呂から上がった時点で皆結構酔いが回っていて、ツレ達はすでに寝入りそうな感じになっていた。
酒の力は偉大で、飲んでいく内に恐怖心は薄れ、段々と眠気も来て、皆でダゴ寝・・・。
そして夜中にトイレで目が覚め上半身を起こした時、背後から気配を感じた・・・。

それは正しくトンネルで感じた気配だった。
一気に恐怖心が蘇り、金縛りとは違う、恐怖心から動けないでたが、まだ酒が残っているせいか気が大きくなり、見た目が怖い位でビビるか!と、わけのわからない根性が沸々と湧いてきて、「こうなったら一発殴ってやる!」と、後ろを振り返えった!

やっぱり後悔した・・・。

やはり女はあの時のように後ろにいて、そしてあの時とは違う行動に出。
急に両手で俺を頬を掴み、口を大きく開けて何か言おうとしていたが、口の中には真っ黒な液体が溜まり、喋る度にうがいをしているようにゴロゴロ言って、何を伝えたかったのかもわからずに、恐怖に動けずにいた。
そんな恐怖が10秒続いた時に気付きました。この女知ってる・・・
そう考えた時にMが寝返りをうち、それに気を取られた次の瞬間にはもう女はいなかった・・・。

それからは朝まで眠れず、ツレが起きるのを待ち、起きたツレに夜中の事を話を。

M:「幽霊て動けるんだな、初めて知った。てかいる事自体昨日知ったけど」

T:「お前本当にヤバイぞ、憑かれてるんじゃないの?」

俺:「多分憑かれてるのかな?てか幽霊知ってる女だった」

T:「はぁ?誰なんだよ?」

俺:「多分・・・元カノのU・・・」

それだけで皆何となくだが理解し察してくれた。

※幽霊知ってる女だった(後編)へ続く