中学一年生の頃、俺は小さな子供の世話が好きだったため、(将来の夢は保父でした)母に勧められ母の職場に近い保育園でボランティアをやっていました。
そのボランティアが出来る場所は自分が住んでいる場所からは遠く学校帰りに電車で行き、帰りは母の仕事が終わるのを待つという日々を過ごしていました。

そんな生活をしていた夏の夜にいつものように暇をゲームセンターで潰したあと、帰る時間になったため母の職場まで向かいます。
母の職場は区役所の隣にある建物の二階でその近くに保育園がありました。
その日は少し母の帰りが遅いシフトだった為夜9時は過ぎていたかと思います。

靴をスリッパに履き替え二階に向かう途中、白いフリルがついたワンピースをきた女の子がビニールボール(?)を持って僕を見ています。
あまりに自然で、あまりに普通。
そしてとても華奢で可愛らしい顔。
どこからどう見ても普通の保育園に通っているような小さな子供でした。

僕は訪ねました、「お母さんでも待ってるの?」と。

その子は何も言いません・・・。
僕を見るだけで、僕はその子に近づいてもう一度訪ねました。

僕:「二階にお母さんかお父さんがいるのかな?」

その子は何も言わず急にボールを持ったまま二階に駆け出します。
もちろん僕もその子を追って二階に。
二階までは踊り場を挟むだけでそんなに長くないし上がったら左に向かえるだけで右に進める道はありませんが、そこにその子はいませんでした・・・。

二階にあがった足でそのまま母の場所に向かいました。

母に「小さな女の子がいたよ」と言うと母は「何いってんの。この職場にいるのは私達(三人ぐらい)だし、この建物の中にいるのも私達だけよ?」と。

俺はその言葉を聞くと不安になり「いや、いたよ。知らないならなおさらここの近所の子かもしれないし、夜も遅いから探そうよ。」と提案しましたが話を黙って聞いていた職場の女性の方が僕を止めに入ります。

「探さない方がいい。今日はもうその事は忘れない。」と全てを察したような口調で僕に伝えます。

詳しく話を訊くと、職場がある建物は昔から寄せ付けてはいけないものを寄せ付けることがあり、ところどころにお札や変な置物があるのはそのせいだという。
その話を聞くと僕は恐怖よりも妙に納得してしまった。

ちなみに僕は霊感というものは無いほうだと思っていたのであまり信じる事が出来なかった。
そして、その日は探さずにそのまま真っ直ぐ母と帰ったが、その行動はもしかしたらダメだったのかもしれない。

その日から彼女を毎日のように見る事になる。
だけど彼女は何もしない。
驚くことはあるが彼女は俺を見て笑うか手にもっているボールで一人遊びをしているだけだった。
恐怖心というものは少なからずはあったが・・・2年ぐらいたったある日、もの凄い怖い夢をみることになる。

その夢はいきなり目の前で家が燃えている夢だった。

けど、自分の家じゃない知らない誰かの家。
その家の中に彼女はいました。

泣き叫ぶ小さな女の子と女の子を抱える一人の女性の姿。
次第に火は強まり女の子と女性の悲鳴が聞こえなくなるまでずっと僕はその光景を見続けていました。

熱さが自分に伝わり死ぬということを夢の中でまじまじと体験したような感覚。
僕は夢から覚めると恐怖と気持ち悪さにトイレで吐いてしまいました。

その日からを境に女の子以外の見てはいけないものまで見えるようになります。
交差点にいる人。
姿が半分しか見えない人。
起きたら布団の中に人がいたこともあります。

誰も相談できる人がいないし、引かれるのが嫌で誰にもその相談はしませんでした。

僕は次第に欝になり病院にまで通うようになります。
母には「病気だからそんな風に見えるのかもしれない」と言われる始末。
当たり前かもしれませんが・・・。

僕はそのまま20歳を越えました。
仕事関係で引っ越しをすると女の子は見えませんが、極まれにいまだに見てはいけないものを見てしまいます。

そして夢もたまに見てしまう・・・。

実家にいる母の電話越しにボールをつく音が聞こえることもあります。
一生僕はこの不安と付き合うことになるのでしょうか・・・。
今は実家に帰るのが怖くて仕方ありません。