木村拓哉の体験談。

僕、伊豆の踊子っていう作品をやらせていただいたんですね。
そのロケ先で一度恐怖経験があるんですよ。

その時は一応一人部屋をロケ先でいただいたんですよ。
それで明日も早いし寝なきゃなと思って寝ていたら「タタタタタタタタッ」と、走り回る音がするんです。

『他の共演者達がまだ起きていて走り回っているんだなぁ。明日早いのに知らないぞ』

そしたら、タッと音が止まったと思ったら、また「タタタタタタタッ」とまた走り回っているんです。

今度は自分の布団の周り、畳の上を走り回る音が聴こえるんです。
間違いなく誰かが走っているんです。

それで自分の部屋に入ってくるというのは、ロケ先ではまずいだろうなんて思いながら目を開けたんですが、誰もいないんですよ。

『うわっ、これ最悪かもしれねぇ・・・』

そう思いながらパッと窓を見たんです・・・。
で、窓を見たら、着物を着た男の子が立っているんです。
その子はイガ栗頭でした。

それで、伊豆の踊子っていう作品は設定が結構古くて、初めその男の子を見た時は伊豆の踊子だからこういうのあるあるって思ったりしたんですが、僕の泊まっている部屋が川辺に立っている旅館で、しかも二階なんですよ。
それなのに窓の外に男の子が立っているんです・・・。

それで相当怖かったんですがカーテンを開けて、窓を開けて見ると、ただ川が流れているだけだったんです。
夜の川がただあるだけ・・・。

それでこれはひょっとしたら“見てしまった”のかなと思って、その日は本当に怖かったんですけど、今日はもういい、明日もあるしと思って寝たんです。

それで次の日の朝、おはようございますって言いながら現場に入っていったら、今もはっきり覚えているんですが、照明のおじさんから「拓哉くん、昨日何かあったかもしれへんけど、これとりあえずお清めの塩やから。これ舐めてから収録しよう」って急に言われたんです。

まずおかしいじゃないですか、全てが。

それで本当にその塩を頂いて、舐めて、収録したんですが、その後そのおじさんに「何かあったでしょ」と聞かれたんで、本当に何で分かったのか分かりませんけど「いやいや、こういうことで昨日の晩に・・・というような経験を僕したんですけど」って言ったら、照明のおじさんが「うん、さっきからずっと居るもん」って言われたんです。