午前3時頃、眠りが浅かったのか外の音が耳についた。

「カツ・・・カツン・・・カツ・・・カツン・・・」

ハイヒールの音だ。
どこかの女が歩いているらしい。
こんな夜更けに・・・。

なんとなく特徴的な靴音は、片方に重心が偏っているせいだろうか。
うとうとしながらそんなことを考えていた。

靴音は段々近付いて来る。
そしてそのまま俺の部屋の窓の下を通り過ぎ、左の方へ歩いて行ったようだ。

靴音は段々遠ざかる。

「・・・ツ・・・カツ・・・カツン・・・カツ・・・カツン・・・」

また戻って来る。

どうやら窓の下を右に左に、往復しているらしい。

なんなんだ?と俺はイラついた。
音が気になって眠れないじゃないか・・・。

女は歩き続ける。

うるさい。
うるさい。
うるさい。

急に、頭の上に気配を感じた。

ぎゅうっと頭を押さえつけられる。

これは人差し指だ・・・。
人差し指はゆっくりと俺の頭を撫で回し始めた。

男の指だ・・・。

だんだんと動きが速くなる。

ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり

人間の動きじゃない・・・。

さっきまではなかった恐怖感が喉元に迫り上がって来た。
だけど動けない、金縛りだ。

どうしよう、どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしよ。

「うわああああああああ!!!」

叫んで思い切り目を開いた。

靴音も、指の感触もなくなっていた。

携帯を見ると4時42分。
随分半端な時間に来たんだな・・・と思った。