うちの会社に、先々代から勤める工員のおじいちゃんがいたんだけど、昔気質の人で作業場でもパカパカ煙草を吸ってたの。

で、現社長が時代が違うってんで作業場の隅に喫煙所を作ったけど、他の工員は吸わない社長に遠慮してそこをほとんど使わなかったのさ。
結局喫煙所はおじいちゃん工員の専用になっちゃって、引退するまで元気に吸ってたんだよね。

そして去年、おじいちゃん工員は心筋梗塞で他界したんだ。
享年・・・は別にいいか。

それから7日後、一人残業した私は戸締りのセコムをしに作業場に行くと、ほんのり煙草の匂いがしたんだ。

私には、なんとなくおじいちゃん工員が最後に仕事をしにきたような気がして、「◯◯さん、もう閉めるよ」と声をかけてセコムした。

次の日、おじいちゃん工員の奥さんが挨拶にきた時に昨日の話をしたら、「旦那が夢に出た」と言うんだね。

夢の中のおじいちゃん工員は、好きな煙草を燻らせながらニヤリと笑って消えたそうだ。
ああ、やっぱり昨日は来てたんだな、死んでも仕事と煙草ってあの人らしいな、って奥さんと笑ったよ。