昔、看護師長をしていた祖母が”ある病院”で経験した出来事。

その病院には小さめの離れがあり、本棟との間は渡り廊下でつながっていた。
渡り廊下は簡単な屋根と仕切り、それに蛍光灯がつけられている簡易なものだったようで、2つの建物の渡り廊下への出入口にはアルミみたいなものでできていて上半分位がガラスがはめこまれているドアがついていた。

離れにはリネンや汚物関係、ごみの集積所等やひっそりと霊安室があった。
人が亡くなるとここに移され、葬儀屋の車が横付けされていた。

ある深夜、そこの患者さんが亡くなり、霊安室に運ぶことになった。
祖母は新人の看護師と組んで遺体をストレッチチャーに乗せて渡り廊下のあるドアのところまで運んでいった。

ところが、ドアを開けてみるとそこにあるはずの渡り廊下がない・・・。
離れとの間にはひざ下位の高さの草むらがあるばかり。
業務でつい先程も使用したばかりだし、場所を間違えるはずもない。
そのようなドアがとりつけられた箇所も他にはない。

反対側の離れのドアは薄暗がりの中に確かに見える。
ただ渡り廊下だけが忽然と姿を消してしまったようだ。

祖母は尋常ならざるものを感じたが、『なぜかここでひるんだ素振りを見せたりしたらやばい、粛々と業務を続けなくては』と思ったそうで、そのまま舗装もされていない草むらをストレッチャーを引っ張り進んでいった。

風が強くて息もしづらい状態。
後ろからストレッチャーを押していた新人さんは「ひゃ~~~」とか言葉にならない声をだしながらうつむいて腰を抜かさんばかりになっている。

それを必死に叱咤激励しながらなんとか離れ側のドアにたどり着き、ストレッチャーを持ち上げ中に入った。

霊安室に遺体を安置し空のストレッチャーで同じ場所に引き返してきた時は何事もなかったように煌々と明かりのついた渡り廊下が存在していたとのこと。