体験談だから大したことないけれども。

某演習場での演習時の話。
当時俺は配属間もない一士で、先輩と一緒に夜間歩哨に立ってたんだが、その先輩もテキトーな人で「寒ぃから外被取ってくるわw」とはるか後方の車両まで勝手に戻っていったため歩哨壕には俺一人。

なので一人で鉄砲構えながら暗視装置に映る前方の風景を眺めつつ警戒してたんだけど、いきなり暗視装置の電源がプツッと切れたんだよ。

目の前が真っ暗になってさ・・・。
電池取り替えたばっかりだし故障かな?参ったなぁ・・・と思いつつ外してると、前の方で人の気配がしたのね。
でも暗視装置が無いから真っ暗でほぼ何も見えない。
でも人がいることは確かなのよ、気配的に。

だから一応マニュアル通り「誰か!」と誰何したんだが、無反応。
もう一度「誰か!」と言うと「××上等兵」とかすかに聞こえたんだよ。
名前は聞き取れなかったんだけど、「上等兵」とは聞こえた。

でもさ、自衛隊に上等兵なんていないじゃん、いるのは陸士長じゃん。
おっかなくなって声も出せず逃げるわけにもいかず、その場で固まるしか無かった。
で、先輩が戻ってきたんだけど、いつの間にか暗視装置は直っていた。

事の顛末をすぐさま話したけど「ウソつくなボケ!」で終了。
納得できないのでと言うか気持ち悪いので、演習後に古参の陸曹に再度話してみたんだけど、「あぁ、お前も見たかーw」となぜか明るい感じで言うのよ。

なんでも、その「何某上等兵」はうちの部隊じゃ結構有名らしくて、ちょうど部隊配属された新兵が某演習場のある地域で歩哨につくと現れる旧軍の兵士だそう。
まぁ演習場に出る幽霊だから、訓練中に亡くなったのか別に戦死者では無いと思うけど。

その陸曹に言わせれば「その幽霊もさ、お前ら後輩を見てると懐かしくなってつい自分も訓練に参加したくなっちゃうんじゃないか?w」だそうで。
いまだに正体不明だけど、そう聞くと不思議と怖くなくなったというか、親近感が湧きました。

と言うことで旧軍の先輩方に敬礼しつつ、長文失礼しました。

※一士・・・自衛隊の階級で昔で言う一等兵。
※歩哨・・・見張り、警戒のこと。
※誰何・・・敵か味方か分からない相手を呼び止めること。