自分がまだ女子中学生だった頃の話。

誰もいない放課後の教室で、帰り支度をしていると、同じクラスのAが入ってきた。

Aはクラス内の派手なグループに所属している男子で、ほとんど口をきいたこともなかったため、特に声をかけずにいたが、Aはスタスタとこちらに近づいてくる。

不思議に思っていると、Aは私の前で足を止め、こちらにナイフを向けてきた。

振り返ると、かなり怖い状況なんだが、当時の私はなぜかAがナイフを貸してくれるものと思い
刃に向かって手を伸ばした。

Aの方もなぜか素直に渡してくれたので、私は「包丁と違ってギザギザしてるんだなー」とか呑気にナイフを眺め満足のいったところでAに返した。

この間Aはずっと無言。

次の日からは、また関わりの薄いクラスメイトに戻り卒業まで何もなかった。

その頃は「親しくもないのになぜ貸してくれたんだろう?」という・・・馬鹿な疑問しか浮かばなかったけれど、色んな意味で危なかった・・・と大人になった今思う。