会社の先輩の親の七光り野郎が、意外にもいいヤツだった話。

現場からはちょっと嫌われてるが、基本的に丁寧で真面目な先輩はそこまで評判は悪くない。
あんまり繋がりのある部署じゃないけど、最近ちょっとしたことで仲良くなった。

現場でケンカがあって、明らかに弱そうな先輩が止めに入って、片方の荒くれ者に一発殴られてから 、先輩の空手が炸裂してえらいことになった。
現場のケンカしたアホの事情聴取と、病院つれてったりすることで仲良くなって、事務所の二階にまつわる話をきいた。

半年ほど前に、先輩は親父さんのツテで入社した。
先輩がきたころは、事務所の二階は夜は立ち入り禁止で、出るとこだったそうだ。
んで、聞くとどうやら、でかくて丸い気持ちの悪いものがいるそうで、お局様もビビってるくらいだった。
先輩は七光り入社の人で、今はいなくなった元責任者に、夜にそこの整理しろといじめられた。
先輩は普通にやりとげたんだけど、そこであった話。

先輩が言うには、「お化けも話したら分かってくれた」といってるけど確実に違う。
その化物っていうのは、なんだか卵に手足の生えた肉の塊みたいなもんで、見たら悪いことが起こったりして、なんかあった人のほとんどが辞めてたそうだ。

先輩は二階の整理を深夜にやってたら出てきたので、最初は蹴ったりしてたけど、後には“説得して成仏してもらった”と言ってた。

夜中までよく仕事している、事務員のお局様と夜勤の連中に聞いたら、本当のことが分かってきた。
先輩のやったことは、乱雑なものを整理してゴミを捨てる。
出てくるものを七光りの特権で捨てまくる。
んで、奥から、なんか動物のミイラみたいなものとか、神棚みたいなものとか出てきた。
駐車場で容赦なく焼く。

それやり始めてから、先輩の後ろで、その化物らしきものがついてまわるのが目撃されてた。
深夜の二階事務所から変な声が聞こえるようになる。

お局様が見たことによると、先輩が掃除してたら、先輩の隣にいつの間にか着物着た女がいて、レンチみたいなもので、化物をボコボコにしてたそうだ。
お局様はヤバいと思って、すぐにそこから逃げた。

今日、それを先輩に言ったら、「なんか憑いてるらしい」って言ってた。
悪い人じゃないんだけどなんか怖い人で、そういうのも関係してると思うけど、とにかく化物はでなくなった。

俺が「陰陽師ですね」ってからかったら、「あれは河童だ。意外と綺麗な女らしいぜ」とか言って先輩は笑ってて、なんだかゾッとした。

たぶん、先輩に憑いてるんはあんまりいいもんじゃない。
先輩とはだいぶ打ち解けたのもあるけど、先輩は体に欠損がある。

「河童に取られた」と言ってた。

深入りしたらまずい気がしたけど、なんか喋りたくてたまらないからここに書く。
悪い人じゃないんだけどなぁ・・・。