俺の母親は、父方の両親と仲がすごく悪かった。
俺はまだ小さかったし、そんなことには気付かなかったが、当時は嫌味やいやがらせが酷かったらしい。
そんな母の唯一の救いは自分の母親、つまり俺の母方のばーちゃん。
どんな酷いことをされても、ばーちゃんがいたことで母親は乗り越えられたと言っていた。

しかし日に日に嫌がらせはエスカレートし、母親は円形脱毛症になるくらいのストレスで、ノイローゼ気味になった。

そんな日々が続いたある日、俺の母親はある夢を見た。
それは不思議かつすこし怖い夢。
あくまで聞いた話だが。

夢の中で気が付くと、前方にすでに他界している叔母(母親にとっての)の姿があった。
そしてその横には老婆の後姿がいて、ぼやけてよく見えなかったが、母親は直感的に、自分の母親(つまり俺のばーちゃん)だと思ったらしい。
おばさんがばーちゃんを連れて行ってしまうと思った母親は、今ばーちゃんまで失ったらもう生きていけないと思った。

そこでおばさんに「おかあさん(ばーちゃん)を連れていっちゃうの?」と聞いたら、おばさんは「それはお前が可哀相だからしないよ」と言って、その老婆を連れて行ってしまった。

そこで目が覚めたが、いったい何の夢だったか分からなかった・・・。
でも忙しい朝、あまり気にせず朝の準備をしていた。
そこで電話が鳴った・・・。

電話は父方からだった。
父方の祖母が倒れたらしい。
母親はそれを聞いて、あの夢の意味を一瞬にして理解した。

父方の祖母はなんとか一命を取り留めたが、脳こうそくで今でも言語不自由で半身マヒが残っている。
それ以降、父方の祖父も祖母の介護にかかりっぱなしになり、母親に対する嫌がらせもなくなった。
というより母親は父方の祖父母には会いに行かなくなったし、会いに行かなくても文句を言われにくくなった、といった方が適切かも。

母親曰く、きっと亡きおばさんが連れて行こうとしたのは、父方の祖母だったんだろうとのこと。
おばさんは母親をよく可愛がってくれて、きっと助けてくれようとしたんではないか、と言っていた。

やっぱこういうことってあるんだな、と思ったわ。