もう十数年前の話。

私が生まれる前に、野良→家猫になった黒猫(♀)がいました。
私が生まれた時点で、推定年齢20歳の魔女猫。
黒猫(クロ)は幼稚園児になった私の留守番相手で、両親も「ちょっと出掛けてくるから、この子の面倒見ていてね」と、猫に話しかけていました。

両親は私に「時間になったら、クロに餌をあげてね」と言っていたので、私は時間通り餌をあげ。
すると、クロは私の方を見て鳴きます。
まるで『お先に食べなさいよ』と言っているようでした。

私が「いらないよ、大丈夫だよ」と言うと、餌を食べ始めました。
でも、半分も食べないうちにまた私を見て鳴きます。

「大丈夫だよ、私はいらないよ」と再度言うと、また食べ始める・・・その繰り返しでしたが、しばらくしてようやく完食しました。
両親相手だと、食事に集中して鳴くこともしなかった猫だけに凄く驚きました。

また、年長者だからか、近所の猫達が代わる代わる転出入(?)の挨拶に来てました。
子猫が産まれれば母猫&子猫が庭に姿を見せ、新参者が来れば紹介者を伴って庭に姿を見せ・・・。
たまに庭で会議(?)のようなこともしてました。
子猫達に爪の研ぎ方なんかも教えていましたね。

そんなクロも、年子の妹が幼稚園を卒園したのを見計らったように亡くなりました。
老衰でしたが、近所の人たちは「あの猫もようやく・・・」と話していたほど長く生きたようでした。

亡くなってしばらく経った夜、夢を見ました。
近所に墓地があって、私は専らそこを散歩道としていましたが、墓地内を見知らぬお婆さんと会話しながら歩いているというものです。

「小学校は楽しい?」

「お友達は沢山出来た?」

・・・などなど、他愛もない会話をしてました。

間もなく墓地も抜ける・・・というところでお婆さんは、「私は別のところに行くから、家まで気を付けて帰りなさいね。あなたと沢山話せて嬉しかったわ。長い間、本当にありがとね。本当に、本当に・・・ありがとう」と言って、もと来た道を戻っていきました。

ハッとして目が覚めると目元が濡れていて、きっとあのお婆さんは黒猫のクロだったんだなぁと、なぜかそう思いました。

20歳を越えた今でも、そのお婆さんの言葉が忘れられません。