心霊・幽霊系

※このお話には『雨の日が悲しい(その2)』があります。

雨の日って憂鬱になるよね。

皆は雨の日ってどうやって過ごすかなぁ?お仕事がお休みだったりしたら・・・。
読書したり、ティータイムをゆっくりしたり、趣味をしたり、映画を見たり、ぼーっと外を眺めてみたり、あえて出かけてみたり?

私?私はね、雨の日にやることは絶対に決まっているの。
お家のお掃除をすることなんだ。
何年か前からの私の雨の日の過ごし方。

ふふふ。
雨の日のお掃除はオススメだよ。
埃がたたないからね。

あ、ごめん関係ない話しちゃった。

えーとね、そう!
雨の日のお話をするね。

かなり前に一人で、少し地方の村へ行った時のこと。
友達から時間があったら是非にと言われて行ったんだよ。
「とても綺麗な景色だから写真とったらいいよ」と。

その村は大きな川が近くにあって、とってものどかで綺麗なの!
観光地ではないから静かな所なんだけど、お祭りの時なんかとっても人で賑わうらしいし、伝統の花飾りを投げる儀式とかもしている歴史ある所なんだってそこの人に聞いた。

村に住む一人暮らしのおばさんのお宅に泊めてもらってね、川魚の伝統料理とか、名産の野菜とか振舞ってもらってとっても楽しかったのよ。
村の人も凄く良くしてくれてねぇ。
景色の綺麗な所教えてくれたり、魚の釣り方教えてくれたり、工芸品見せてくれたりね。
最高に楽しかったの。

ただ・・・。
ただ一つ気になったことが・・・。

ある日ベッドで寝て起きたら・・・布団がぐっしょり濡れてるのよ。
窓が開いて雨が吹き込んだワケでも、雨漏りした様子もないのに!

なんだかおばさんには言えなかったけど。

でも起きると毎朝毎朝、濡れてるの。
部屋の中も、あちこちに小さな水溜りが沢山。

夢だと思ってたけど、夜中にピタ、ピタ、ピタ、ピチョン・・・って水滴が落ちるような音がするの。
だって部屋の中なのに、水音なんておかしいと思うでしょ?

濡れた音・・・ゆっくりと近付いては離れるその音がとっても不気味で・・・。
まるで濡れた誰かが歩き回るみたいな音。

まさか、泥棒?って思って、気味悪いし、四日目くらいに我慢できなくなっておばさんに言った。
そしたらね・・・「雨の日だからねぇ・・・」って説明された。

その時はそれで納得したんだけど・・・。
でも!!絶対に雨漏りなんかじゃないよ!

・・・だって、部屋の中の水溜りが人の足の形をしてるんだもの。
くっきりと。床の部分を見たらね、足の形なの・・・くっきり指の部分まで見えてるのもあった。

誰かがびしょ濡れのまま部屋中を歩き回った、そんな感じ。
てんてんと続いていく足跡、部屋中に・・・。

よく見るとその村はどこか不自然な所が多かったの。
川の近くにある記念碑みたいなものとか、・・・よく見るとお墓だったり・・・。
ヘンな魔除けのお札みたいなものが家中の戸に貼ってあったり・・・。
村を囲む柵には何かの警告の言葉が書かれていたり、雨の日は全員で家の掃除をしだしたり・・・なんかヘンよね?

村の女の子と仲良くなったんで、その子に聞いてみたの。
「何で墓地じゃなくて川の近くにお墓が二つだけあるの?流されたりしない?家中に貼ってあるお札は何のおまじないなの?」って。

その子はお喋り好きだったから色々話してくれた。

お札は昔偉いお坊さんが来て、もれなしのお礼に魔除けとして村に置いてくれたもので、ずっと大切にしてるんだとか。
雨の日は必ずお掃除をする決まりがあって村独特の風習だとかね。
そして川の近くにある不自然なお墓の話・・・・・・。
とっても悲劇的な話なんだ・・・。

あの村に昔、・・・本当に昔のことだよ?ある姉妹がいたらしいの。

姉は誠実で働き者、妹は姉思いの優しい子、二人とも大変美しい姉妹だった。
両親を早くに亡くしたその二人は仲良く仲良く暮らしていたの。

けれども村の一部の人達はその姉妹を疎ましく思っていた。
何故なら二人は大変な美人だったそうで、村中の男の子達が競って求婚したんですって。
そのせいで見向きもされなくなった女の子達が、その姉妹を妬んで嫌っていたみたい。

嫉妬って怖いよね。

ある日村長さんの家に泥棒が入ってお金が盗まれたの。
その泥棒と鉢合わせしたのか、村長さんは殺されてしまって村は大騒ぎになった。

犯人は誰だろう、という話が出た時にその村長の娘さんがこう言った。

「私犯人を知ってるわ。お父様を殺してお金を盗んだのはあの娘達よ!私見たもの!!」・・・ってね。

犯人とされたのはその姉妹。
でもきっとそれは村長の娘の勝手な憶測だったの。
村長の娘も他の女の子と一緒で好きな男の子が姉妹ばかり気にかけるのを妬んでのこと。
そして邪魔な者は消してしまえと言わんばかりに、村の女の子達は次々と彼女達が犯人だと言い出した。

姉はその時病気で働けなかったらしく、村の中では厄介者だったみたい。
だから今までの求婚者達も冷たくて、誰も二人を助けようとはしなかったの。
よく考えたら病気のお姉さんがベッドを抜け出して盗みなんかすると思う?

・・・酷い話だね。

証拠も何もないまま、二人は犯人にされたの。
当時は怖かったね・・・村の人達がそうと決め付けただけで犯人にされてしまった・・・。

その村の掟により、二人は殺人と盗みの罪で川へ落とされるという罰を受けることになった。

静かに見える川は実は凄く深くて、流れも速いの。
そして恐ろしいのは手足を縛って川に落とされるということ。
どんなに泳ぎが出来てもそれじゃ助からないよね。

いわゆる死刑の一つだよ。

その日は雨だった。
激しい雨の日。
ずぶ濡れの二人は橋の上に連れて行かれ、その間にも周りからは石を投げられた。

悔しかったでしょうね、恐ろしかったでしょうね・・・。

落とされる直前まで、無実を訴えていた二人だったけど無慈悲な腕が二人の体を橋の上まで持ち上げて・・・。

その瞬間、姉の方がこう叫んだ。

「待って!正直に言います・・・犯人は・・・村長を殺したのは私です、私一人です!!妹は何も知りません。離してあげて!」

愛する妹を助ける為に、お姉さんは嘘をついたの。
どちらも犯人でないのに・・・可哀相だね。

妹もきっと同じように言いたかったに違いない、姉のことを誰よりもきっと愛していたんでしょうから。
でも妹は姉を庇えなかった。
・・・それには理由があったの、妹の方はね・・・生まれつき口が聞けなかったのよ。

昔だから文字は誰でも書けた訳じゃない。
妹の言葉はアイコンタクトだけ、それは姉にしか分からなかった。

伝えたくても、きっと姉以外には分かってもらえなかったのでしょうね。

その姉の言葉で妹の方は許されたけれど、お姉さんの方は川へ落とされ死んでしまった。遺体は流され見つからないまま。

・・・妹はどんな気持ちだったでしょうね・・・・・・。

これだけでも悲しくなるね、けれどもこの話には続きがあって・・・・・・。

・・・無実の罪で姉を殺された妹は、お姉さんが殺された一週間後忽然と姿を消した。

それから数日たったある雨の日の夜。
村の半鐘を鳴らす人が居たの、それはあの妹だった。
それに気付いた村人は起き出した。
妹は姿を見せた途端走り出した。
逃げるように川へ向かう妹を追うと・・・村を川から守る堤防が壊れかけてたの。

「大変だ、直さないと!」

これは大変と村の男達は道具を持って川へ向かった。

川は雨で増水していたけれど、なんとか力を合わせて土嚢を積んだり石を積んだりして村を守ろうとした。

けれど次の瞬間、ありえないほど大きな鉄砲水が来て、そこに居た村人達は流されてしまったんだって。
30人くらい居たはずなのに、水がそこに来た後、誰一人・・・立っては居なかった。

妹はというと・・・一人高い所からその様子をケタケタ笑って見ていたらしいの・・・声は出さずにね。
そしてその妹は村へと向かった。家に残っている女の人や子供達の所へ。

雨音に紛れて妹は一つの家に侵入した。
持ち出していた斧で、そこに居た女の子を・・・。

家中、いえ村中の家を周って彼女は人々をその斧で手にかけた。

生き残った人の話によると雨の中逃げ惑う人達を追いかけて妹は半狂乱になりながら殺し続けたそうよ、大きな斧で。

騒ぎを聞いた隣の村から人が来た時、半分以上の村人が殺されてしまっていたの。
あちこちに死体が転がって、どこの家も水と血の混じった足跡だらけだったというから・・・想像するだけでも怖いよね。

その妹はその事件以降行方不明になったけど。
噂では川で姉の後を追って自殺したんだとか・・・。

村人への復讐をしたのね、この話は一部始終を目撃した人・・・たまたま無事だったんだね。
生き残った中に姉妹を陥れたあの村長の娘さんが居てこれはその人の話らしいの。
隠れてて助かったようだけど、その後ずっと姉妹の幻覚に悩まされて精神を病んでしまい最後には井戸に身を投げて自殺したんだって。

話では、その娘さんは病んでる間ずっと姉妹の名を呼んでいたらしいよ・・・。

その大量殺人の事件以降、村ではね、雨の日になると必ず女の子が二人、川の近くに現れるんだって。
ずぶ濡れの女の子が二人、仲良く手を繋いで村や川付近をウロウロと歩き回るらしいんだ。
まだ村を憎んでいるのかな?

川の近くのお墓はあの姉妹のもの。
・・・誰も埋まってはいないんだけど、鎮魂の意味も込めて後々作ったみたい。
不思議なことにどんなに川が氾濫しても、土砂崩れがあっても、あの墓石だけは流されたりしないと不思議がられてた。

村では今でも濡れた足跡が色々な所に現れるんだって。
時には家の中も。
村の家中に時々濡れた足跡が残されているんだそうだよ。
私が見たのと同じ。

まだ姉妹で彷徨っているなんてとっても可哀相・・・。

彷徨う二人はなんか若い女の子の居る所によく来るみたいだから、若い子達は雨の日、お守りを抱いて寝るみたい。
村長の娘さんを探しているのかな?一番憎いはずの相手を、自分の手で葬れなかったから?
それとも自分達に冷たくした村の女の子全体を憎んでいたのかなぁ?

早く安らかに眠って欲しいと思うよ。

私その話聞いた時泣いちゃった。
そのお話してくれた子は貴女優しい人ね、泣かせちゃってごめんね、って言ってくれたけど。
私凄く悲しくて切なくて・・・しばらく動けなかった。
お墓にお花沢山供えたよ、村の周りも綺麗にしたりした。
私・・・・・・二人を思うと苦しい。

こんな素敵な村にそんな惨劇と悲劇があったなんて・・・。

村の人達はね、雨の日は家中の掃除をするの。
最初に言ったね、この村だけの風習・・・もう伝統のようなものだよ。
これはずーっと決められた決まりごと。

何故?

だって・・・家中に水溜りと足跡が出来るんだもの。
やらなくちゃ・・・ね?

しばらく滞在してその不思議な伝統に縛られた村を眺めたよ。
最初は怖かったし嫌だなと思ったけど不思議と、慣れてしまうものだねぇ。

悲しい思い出と共に私は帰宅した。

※雨の日が悲しい(その2)へ続く